西畑大吾の限界突破と、福本莉子のミステリアスな輝き
──主人公の佐倉真司を演じた西畑大吾さんとは、なにわ男子のデビュー前から幕間映像などでご一緒されていたそうですね。今回、俳優としての西畑さんと向き合うことになって、どのようなお話をされましたか?
「佐倉くんは、『どうして自分は生きているんだろう』『自分が存在していることで、誰かの迷惑になっているんじゃないか』とふと考えてしまうような一面がある子かもしれないですね」といったことを伝えました。元々は人気者だった彼が、傷つく出来事を経て、そんな風に自分を追い詰めてしまう。そんな中で花森さんと出会ったらどんな感情が生まれるのか、と。
事前の準備としてキャラクターシートを作成し、「彼はどんな人物で、どんな仕草をして、どんなトーンで話すのか」と丁寧に話し合ったのですが、その時の西畑さんの真摯な目が、とても印象に残っています。
──監督は西畑さんについて「自分の限界を突破していく瞬間を何度も見た」とコメントされています。特にその瞬間を感じたのはどの場面でしたか。
まずは1人目の死者の真実を知り、部屋で1人、その方の思い出に向き合う場面ですね。そこはワンカットでじんわりと感情を追いかけながら撮影したのですが、西畑さんの表情の変化が本当に素晴らしかったんです。現実を受け入れがたい放心状態から、それでも前を向こうと静かに涙を流すお芝居は、これまで見たことのない西畑さんの表情でした。
もうひとつは、クライマックスのシーンです。自分ではどうすることもできない絶望的な状況に直面し、ただ自然の抗えない運命に身を任せるしかない中で、それでも全てを受け止めようとする佐倉くんの姿。顔をクシャクシャにして泣き崩れるようなその表現もまた、これまでに見たことのない西畑さんの姿を感じた瞬間でした。
──佐倉がそのワンカットシーンは西畑さんの涙を含め、どこまで演出をし、どこから西畑さんに委ねたのでしょうか。
事前の話し合いを通して、「佐倉真司」という人物像が自然とお互いの中で共有できていました。ですので、あのシーンの撮影直前、西畑さんはすでに凄まじい集中モードに入られていたんです。私からあれこれ言葉をかけるというよりは、その集中状態のまま現場に入ってもらい、静かにカメラを回しました。
1テイク目も良く、OKだったのですが、「もう一度演じたら、西畑さんはどんなアプローチを見せてくれるんだろう」と気になり、もう一回カメラを回したんです。すると、まったく同じタイミングで涙を流していました。西畑さんの中で、佐倉くんの感情の流れが完璧に構築されていたんだなと実感しました。

──福本莉子さんが演じた花森は、天真爛漫に見えながら複雑なものを抱えています。福本さんとは、花森の「明るさ」と「影」のバランスをどのように話し合いましたか?
人は誰しも何かしら抱えているものがありますよね。だからこそ、花森自身が抱える傷や事情を大切にしつつも、「それでも佐倉くんや友達と話す時には、なるべく明るく振る舞おうとする」という、彼女の優しさや気遣いを大切にしましょう、とお話ししました。
──監督は「小悪魔的に微笑む福本さんのお姿は、はじめてお目にかかりました」と語っていらっしゃいます。そういった表情は福本さんが花森として存在する中で自然とにじみ出てきたものだったのでしょうか?
人間の表情や見え方というのは、「こういう性格や歴史を歩んできた人だから、こういう笑顔になる」といったように、キャラクターの内面と線でつながっていると感じています。ですので、「花森を小悪魔的に見せよう」と狙って演出したわけではありません。花森の性格や抱えている背景を踏まえた上で、「それでも明るく振る舞おうとする姿」がどこかミステリアスに映り、結果として小悪魔的な魅力のある笑顔につながっていたのだと思います。
私自身、事前にお互いの解釈をじっくりすり合わせた後は、現場で「いまどういう状況なのか」を確認していく作業が中心で、当日に細かく指示を出すことはあまりしません。だからこそ、俳優さんの力がとても大きいんです。西畑さんや福本さんが役を深く読み解き、表現する高い力を持っているからこそ、すべてのシーンが美しく出来上がっているのだと思っています。

── 佐倉と花森は「同志」であり、「共犯関係」のような特別な絆を築いていきます。初共演となる西畑さんと福本さんですが、お二人が現場で自然とその距離感を作っていってくれたのでしょうか?
今回は撮影前にリハーサルを重ねていたので、その段階でお二人はお互いの距離感や「同志」としての感覚を掴めていったのだと思います。
映画というのは本当に多くの要素が重なり合って、あの一瞬の世界が作られています。事前の準備期間や一緒に作品を作ってきた時間、スタッフが作る現場の雰囲気、そしてその瞬間の二人の感情……。 そうしたすべてが組み合わさって出来上がったものです。もちろん西畑さんと福本さんだからこそ出来上がった二人でしたすね。
「誰か一人の力」という明確な答えがあるわけではなく、キャストやお互いの熱量、そして現場の空気感など、あらゆる力が合わさったからこそ、あの特別な関係性が生まれたのだと思っています。
──座長として現場を引っ張った西畑さんと福本さんですが、監督から見てお二人の現場での立ち振る舞いや佇まいはいかがでしたか。
お二人とも、現場をすごく明るく和気あいあいとした雰囲気にしてくれました。それでいて、作品が持つ緊張感の糸のようなものは常に心地よく張り詰めているような感覚があって。明るさと適度な緊張感が同居する現場だったので、撮影していて本当に楽しかったですね。
西畑さんも福本さんも、周りがよく見えていて気遣いに溢れた、とても優しい方です。スタッフの困り事にいち早く気づいてフォローしたり、ちょっとつまずいたスタッフがいれば「大丈夫ですか?」と優しく声をかけたり。他にも、たくさんの差し入れをしてくれましたし、そのお菓子をきれいに並べたりと、常に現場全体へ細やかに目を配っていました。
そうやって温かく現場を支えてくれる西畑さんと福本さんの姿をみんなが見ていたからこそ、「この座長の素晴らしい姿を最高のかたちで捉えよう」と、チーム全員がひとつに一致団結できたのだと感じています。

