ベネチア国際映画祭の開催地イタリア。華やかで美しい国のイメージとは裏腹に、イタリア映画と聞くとなんとなく小難しくて敬遠しがち……いえいえ、そんなことはありません!巨匠から良質な人情劇まで、奥深くてバラエティーに富んだイタリア映画の世界へご招待します。(文・井上健一/デジタル編集・スクリーン編集部)
03: イタリアンホラー
バイオレンス&エロス!
イタリアが敗戦の傷跡から立ち直り、娯楽映画が盛んに作られるようになった1960年代には、それまで人気のなかったホラー映画のジャンルも花開く。そのきっかけとなったのが、魔女として処刑された姫が100年後に蘇って復讐を果たそうとする「血ぬられた墓標」(1960)。この映画は世界各国で公開され、ティム・バートンなどに影響を与えた。また、これが初監督作品となったマリオ・バーヴァと主演女優のバーバラ・スティールは以後、イタリア製ホラーの象徴的存在に。
1960年代末になると、既存のホラーよりもバイオレンスとエロス描写に力を入れたイタリアならではの“ジャッロ”と呼ばれる作品が登場。その第一人者が「歓びの毒きば牙」(1969)で監督デビューしたダリオ・アルジェント。1977年の「サスペリア」は、日本でも「決して、ひとりでは見ないでください」の惹句が話題となり、年間洋画興行ランキング5位となる大ヒットを記録した。
さらに、ルチオ・フルチ監督の「サンゲリア」(1979)のヒットにより、1980年代にはイタリア製ゾンビ映画のブームが到来。ダリオ・アルジェント製作の下、マリオ・バーヴァの息子ランベルト・バーヴァが監督を務めた「デモンズ」(1985)などが生まれた。
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