ベネチア国際映画祭の開催地イタリア。華やかで美しい国のイメージとは裏腹に、イタリア映画と聞くとなんとなく小難しくて敬遠しがち……いえいえ、そんなことはありません!巨匠から良質な人情劇まで、奥深くてバラエティーに富んだイタリア映画の世界へご招待します。(文・井上健一/デジタル編集・スクリーン編集部)
04: イタリア映画界のいま
良質な人情劇が続々と誕生
巨匠たちが次々と世を去り、陰りの見え始めた1980年代末。1本の大ヒット映画がイタリア映画の健在ぶりを強く世界に印象付けた。それが、「ニュー・シネマ・パラダイス」(1988)である。監督は弱冠32歳のジュゼッペ・トルナトーレ。映画愛と故郷シチリアへの郷愁に溢れたこの作品は世界中で絶賛され、カンヌ国際映画祭審査員賞、アカデミー賞外国映画賞など錚々たる映画賞を受賞。一躍、イタリアを代表するヒットメーカーとなった。
また、トルナトーレと同年代で、「監督ミケーレの黄金の夢」(1981)、「親愛なる日記」(1993)などを手掛けてきたナンニ・モレッティは、2001年に「息子の部屋」でカンヌのパルム・ドールを受賞。
彼らより若い1960年代後半以降に生まれた世代では、マッテオ・ガローネが「ゴモラ」(2008)、「リアリティー」(2012)でカンヌ国際映画祭グランプリを受賞。格調高い映像美が持ち味のパオロ・ソレンティーノは、「グレート・ビューティー/追憶のローマ」(2013)、「グランドフィナーレ」(2015)などを送り出している。また、ハリウッドに進出したガブリエレ・ムッチーノは、「幸せのちから」(2006)、「パパが遺した物語」(2015)などを手掛けている。
次ページ:イタリア映画界を支えたイイ男イイ女