作品を発表するたび話題となり、最新作「女王陛下のお気に入り」が第91回アカデミー賞部門にノミネートされたヨルゴス・ランティモス監督。その一方で、難解でとっつきにくい印象を持たれているのも事実。だけどフタを開ければ愛すべき登場人物と独創的な世界が広がっています。一度足を踏み入れたら抜け出すのに苦労する“ランティモス・ワールド”へようこそ。
(文:稲田隆紀/デジタル編集:スクリーン編集部)

発表する作品はいずれも映画祭で賞賛の嵐

『女王陛下のお気に入り』を手がけたヨルゴス・ランティモスは、現在、映画ファンからもっとも注目されている映画監督のひとり。ギリシャ・アテネの出身、1973年5月生まれというから、2019年6月現在で46歳だ。

アテネのフィルムスクールで学び、CFやPV、ダンス・ビデオなどを手掛けつつ、短編を監督。さらに長編作品にまで挑むようになった。経歴だけを見る限り、昨今の監督にありがちな軌跡だが、ランティモスは長編作品をつくるようになってからが凄かった。

日本では未公開ながら、長編デビュー作の『Kinetta』がベルリン国際映画祭で高い評価を受け、続く『籠の中の乙女』はカンヌ国際映画祭“ある視点”部門のグランプリに輝いた。第3弾の『ALPS』(これも日本未公開)はヴェネチア国際映画祭最優勝脚本賞を手中に収め、英語作品の『ロブスター』はカンヌ国際映画祭審査員賞。

そして『聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア』はカンヌ国際映画祭脚本賞を獲得している。そしてヴェネチア国際映画祭銀獅子賞(審査員大賞)と女優賞、アカデミー主演女優賞の成果を誇る『女王陛下のお気に入り』に至る。

つまりは送り出す作品がいずれも映画祭で絶賛され、賞を手にしている。ランティモスの只ならぬ個性、才能を証明する経歴である。

「女王陛下のお気に入り」

18世紀、アン女王の寵愛を争うふたりの女官のドラマ。生々しく、あからさまな女の戦いがユーモアと辛辣さのなかに描かれる。オリヴィア・コールマンはじめ、女優の演技が圧倒的な2018年作品。

画像1: 奇妙 キテレツ 摩訶不思議...ハマる!ヨルゴス・ランティモスの世界

▶︎ココがランティモス!
従来よりもストーリーの難解さが薄まった分、高濃度になった悪趣味描写

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画像2: 奇妙 キテレツ 摩訶不思議...ハマる!ヨルゴス・ランティモスの世界

「女王陛下のお気に入り」ブルーレイ&DVD
2019年5月24日(金)より発売中 
フォックス・HE
3990円+税(2枚組)

刺激的で唯一無二のランティモス・ワールド

ランティモスを言い表すには、“奇想”ということばがもっともふさわしい気がする。どの作品も、およそ凡人が思いつかない独自の発想で構築され、ユーモアというには毒の強すぎる世界が映像で静かに展開する。見る者を困惑させつつ、ぐいぐいと画面に惹きこむ手法といえばいいか。辛辣とあからさまが交錯した、刺激的で唯一無二の世界なのだ。

閉塞した現実をカリカチュアした世界のなかで、どの主人公も置かれた状況から抜け出そうとするが、必ずしも思い通りには行かない。世界は奇妙で不条理で、あがいても事態は決して好転しない。作品からはギリシャ社会で生まれ育ったランティモスのシニカルな世界観が見え隠れする。

『籠の中の乙女』では、外界と遮断した生活を子どもたちに送らせる両親の奇行を寓意性満点に描き、最後は破綻した家族の結末を見る者に委ねる。

「籠の中の乙女」

外界から隔絶した環境で子供たちを育てようとする家族のシュールなファミリードラマ。過激なセックス描写もセンセーションを巻き起こした。ヨルゴス・ランティモスの名を一躍広めた2009年ギリシャ作品。

画像3: 奇妙 キテレツ 摩訶不思議...ハマる!ヨルゴス・ランティモスの世界

▶︎ここがラモンティス!
姉妹による謎ダンスなど、この頃から確立されているみる者の心理を揺さぶる光景

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「籠の中の乙女」
TCエンタテインメント

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