長編デビュー作「へレディタリー/継承」で映画ファンの度肝を抜いたアリ・アスター監督最新作「ミッドサマー」がついに本日公開!一筋縄ではいかない本作の見どころ&鑑賞ポイントを解説。さあ、アリ・アスター流の“祝祭”へ出かけましょう。(文・須永貴子/デジタル編集・スクリーン編集部)

注)ラストをほのめかすような表現が含まれています!ご注意ください。

鑑賞Point2
青空広がるスウェーデンに着いてから物語が激変

画像: お揃いの服をまとい、快く迎えてくれる村人たち

お揃いの服をまとい、快く迎えてくれる村人たち

しかし、ホラーといえば暗い画面で展開するのが定石なので、ほとんど日が沈まない白夜の地で、どんな恐怖を作り出すのか?不穏さ、不吉さ、邪悪さを匂わせさせたら右に出る者のいないアスターは、緻密な伏線を、これまでのホラー映画にない斬新な表現で回収し、その期待に見事に応える。特に、ホルガの一角で飼われていた熊の使い方には度肝を抜かれてしまった。

また、スウェーデンで羽目を外そうとボーイズトークに花を咲かせるクリスチャンに対し、ペレがかけるある予言めいた一言にもゾッとした。すべてはこのときから仕組まれていたことなのだ。また、彼らが宿泊する建物の内部に描かれた壁画や、あるラブストーリーが描かれた布、なんなら映画の冒頭に映し出される宗教画のような4つのシーンから成る一枚絵からして、プロダクション・デザインも予言的。来日したアスターは上映後のティーチインで、ダニーたちがホルガで体験することはすべて、それらの絵のなかでメッセージとして予兆されていると語っていた。

ホルガの建物などに描かれた予言めいた壁画

鑑賞Point3
登場人物のセリフや壁画などに隠されたメッセージ

まさかこの絵が行く末を暗示しているとは…

家族を失ったダニーは、アメリカから遠く離れた異国の地で、共同体に受け入れられる。そう、本作も「へレディタリー/継承」と同様に、家族の物語でもあるのだ。前作は血で繋がった一家族の物語だったが、「ミッドサマー」では共同体という、より大きな家族が描かれる。血の繋がりはなくとも、文字通りすべてを分かち合うことで、個と個の境界線が消滅し、お互いを縛り合い、共感能力を超えた同調圧力により感情すらも一体化する様子に戦慄する。アスターは、ホラー映画の枠組みを利用して、“(家族の)絆”という美辞麗句がはらむ邪悪さを暴いているように感じた。

画像: 彼女の身に一体何が…⁉

彼女の身に一体何が…⁉

「ダニーにとってこれはハッピーエンド」と言うアスターの意図は、ラストカットの彼女の表情に込められている。自身の恋愛体験をそのまま主人公に投影する映画作家の作品は、そこから伝わる自己弁護と自己愛に観客は辟易としがち。しかしアスターは、主人公を自身とは異なる女性にしたことで客観的な視点を獲得し、性別に関係なく観客を異世界に招待する。次の招待状が届く日が、こんなにも楽しみな映画作家はそういない。

アリ・アスター監督、待望の初来日!!

優しい声で質問に答えていたアリ・アスター監督

2020年1月29日に初来日したアリ・アスター監督。31日のQ&Aイベントでエンディングについて聞かれると「『ミッドサマー』は別れと失恋の映画。だからこそエンディングは解放感を感じるものにしたかった」と回答。さらに「観客のみなさんにはダニーの視点になって彼女が経験することを同じように体験してほしい」と本作に込めた思いを語った。

「ミッドサマー」(2020年2月21日公開)
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