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グレタ・ガーウィグ監督らしい会話のリズムと新鮮な構成
これまで何度も実写化されてきたルイーザ・メイ・オルコットの『若草物語』が、グレタ・ガーウィグ監督で映画化される。そう聞いたときには意外な気がしたものだ。グレタといえば単独初監督作にしてオスカー候補になった『レディ・バード』をはじめ、現代女子のリアルを今どきなテイストで描いてきた気鋭の映画作家だからだ。
けれども、その意外性はすぐに納得に変わる。なぜなら、『若草物語』は自分らしく生きることを願う少女たちの成長物語。希望に輝く少女時代も、成長して向き合う現実の厳しさも、もちろん家族の愛や絆も、いつの時代も変わらない。そう、彼女たちの物語は、現在を生きる私たちの物語でもあるのだ。
グレタは、その普遍的な物語を彼女らしいリアルな会話のリズムと新鮮な構成で描き出す。誰もが知る物語(最近は、原作を読んだことのない女の子も多いそうだが)を時系列どおりに描くのではなく、作家を目指すジョーのニューヨーク生活で幕を開ける大人時代と、マサチューセッツ州コンコードで暮らす少女時代を自在に行き来してみせるのだ。おかげで、4人それぞれの成長も、変わらない芯も、より鮮やかに浮かびあがる。
注目POINT!
原作をアレンジした新鮮な構成
原作通り時系列に描くのではなく、作家を目指すジョーの大人時代と少女時代を自由に行き来する
もちろん、姉妹を演じる女優陣も魅力的。オルコット自身が投影されている次女ジョーを演じるシアーシャ・ローナンは、『レディ・バード』でグレタの世界観を体現したように、ここでもグレタがジョーに重ねた想いを鮮やかに体現。エマ・ワトソンは、結婚の理想と現実の間で揺れる長女メグを演じて、すっかり大人の女優になったことを実感させる。
内向的で繊細な三女ベスは、『KIZU 傷』で注目されたエリザ・スカンレン。そして、大きな成長を見せる末っ子エイミーには、話題作『ミッドサマー』で主演を務めるフローレンス・ピューという旬な顔ぶれ。シアーシャとフローレンスが揃ってオスカー候補になったことからも、姉妹たちの化学反応がいかに素晴らしいか、想像していただけるだろう。
注目POINT!
四姉妹を演じる最旬女優の化学反応
次女ジョーを演じるシアーシャ・ローナンをはじめ、長女メグ役のエマ・ワトソン、三女ベス役のエリザ・スカンレン、四女エイミー役のフローレンス・ピューという四人の女優たちの化学反応が素晴らしい
ウィノーナ・ライダーがジョーを演じたジリアン・アームストロング監督の『若草物語』(1994年)では、女性が職業を持つことが珍しかった時代に作家を目指すジョーを通して、夢を持つことがいかに大切かを印象づけた。少女時代のエイミー(キルステン・ダンスト)の「みんな、いつの日か大人になるのよ。夢を抱かなきゃ」という言葉と対照的な、「私はみんなと違って、夢を抱かなかった」と生涯を振り返るベスの言葉に号泣した人も多いだろう。