今月の一本「TENET テネット」
2020年9月18日(金)公開
「インセプション」(2010)「ダンケルク」(2017)など革新的な作品を世に放ち続ける鬼才クリストファー・ノーラン監督が、世界7か国を舞台にIMAXカメラで撮影し、驚異のスケールで放つタイムサスペンス超大作。時間のルールから脱出し、第三次世界大戦を防ぐという任務を託された男の戦いを描く。「ブラック・クランズマン」(2018)で注目されたジョン・デヴィッド・ワシントンが主演を務め、「トワイライト」シリーズのロバート・パティンソンがその相棒役で共演。
監督/クリストファー・ノーラン
出演/ジョン・デヴィッド・ワシントン、ロバート・パティンソン、エリザベス・デビッキ、ケネス・ブラナー
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編集部レビュー
どこか“かつての007映画”のようなテイストも
この映画を一度見ただけですらすらと内容を解説してくれる人がいたら尊敬しちゃうこと間違いなし。普通こういう作品を見ると二度と手を出さないケースが多いが、クリストファー・ノーラン作品の凄いところは、難解な部分を解き明かしたくて何度でも見てしまうところ。
思い違いかもしれないが、ノーランが愛する“昔の「007」”的でもある。ここまでSFではなかったけれど、かつての007の冒険もやはり一度見ただけではそのミッション遂行の過程を一言で説明するのは難しかった。
これらを何度も見てしまうのはやはり(スパイ・アクションなりの)エンタメ精神が根底にあるからかもしれないが、それだけでは飽きられてしまう。ノーランが脚本・撮影・演技などなど“映画屋”だけが熟知するプロの技を合致させる術に長けているから? 興味の尽きない映画だ。
レビュワー:米崎明宏
編集長。キャストではロバート・パティンソンが良かった。『ザ・バットマン』も楽しみですが、まずはコロナからの回復をお祈りします……
「知性」というより「感覚」への挑戦状
「時間」を自由自在に操ることでジャンル映画を革新してきたノーラン監督。今回彼が満を持して挑んだのはスパイ映画。そこに“ 時間の逆行” という概念を持ち込み、観客を迷宮の中に誘い込む。時に「難解」とされるノーラン映画史上でも最高難度の作品だ。
物語自体は「第三次世界大戦を防ぐべく一人のスパイが奮闘する」というシンプルなもの。だが説明的な描写をそぎ落とし、当たり前のルールが通用しない“時間の逆行” という世界に、次第に頭が置いていかれる感覚に陥る。
一方でその混乱が、「何も見落とせない」という緊張感・ドライブ感を生む。そして最後、映画が別の顔を見せた瞬間、感情が大きく揺さぶられる。これは頭で理解する作品ではないのかもしれない。観客の「知性」に対する挑戦状に見えて、「感覚」「感性」を試す作品のようにも感じた。
レビュワー:疋田周平
副編集長。本作の驚異的スケールの象徴と言えるのが飛行機墜落シーン。なんと実際に引退した飛行機を購入して実写撮影されたそうです。