カバー画像:Photo by Tsukasa Kubota
── 多様な人種の声を担当していますが、演じ分けのコツはありますか?
「合わせるとしたら、国や人種というよりも演じている俳優さんの声ですね。吹き替えは声マネではないので、似せる必要はありません。感情がコピーできていればいいので、誰を演じるときでもやることは基本的には同じです。
ただ、黒人俳優特有の低い声を求められるときには僕の声がそこまで低くはないので、少し苦労はしますね。真似をする必要はないけれど、聞こえてくる声に近づけたくなる気持ちもあるので。
ドラマ『SUPERGIRL/スーパーガール』のジェームズ(メカッド・ブルックス)は、体も大きくて低い声という黒人俳優に多いタイプで、“この声を出すのか”と思ったのですが、音響監督からは地声のままでOKというリクエストもあり、作り込まずに演じました。
ジョン・デヴィッドは、柔らかく穏やかな声で、僕の地声に近かったのと、“作らない”という演出だったので、こちらも自然に喋っている感じです」
── 作らないのは逆に難しそうに感じます。
「今回は本当に難しかったです。どうしても力を込めたくなるセリフもあるのですが、ジョン・デヴィッドの演技がそれをやっていない。なので、腹筋に力を入れない演技に切り替えました。力を抜いて穏やかに、柔らかくというのを常に意識しました。僕の中で腹筋で芝居をする感覚が出来上がっているので、最初はかなり戸惑いました」
── 田村さんといえば、チャドウィック・ボーズマンですが、彼を演じるときのポイントはありますか?
「彼の声もとても穏やかで柔らかく、ジョン・デヴィッドと共通するところがあると感じました。チャドウィックのほうがハスキーで品がある声のような気がします。この二人に関しては、今話しているようなトーンで喋っているので、作り込んでいないというのも似ている点です」
── 声のお仕事からのスタートではないんですよね。
「シェイクスピアシアター、ニナガワ・カンパニー・ダッシュ(現ニナガワ・スタジオ)で舞台から活動を始めました。実は、その頃から声の仕事をやりたいという思いがありました。
紹介で足を踏み入れることになった吹き替えの世界ですが、声優としてのレッスンはしたことがないので、声の演技でベースになっているのは舞台での芝居です」
── 本作にはシェイクスピア作品にゆかりのあるケネス・ブラナーも出演しています。お芝居をするうえで、通じるものがありそうですね。
「急に怒り出すなど腹筋を使って声を持ち上げる、そういったシーンでの演技では、シェイクスピアの俳優だなと感じる部分はありました。もう少し年齢を重ねてからですが、機会があれば、演じてみたいなという気持ちもあります」
── ファンの方にメッセージを
「謎が解けたと思ったら、新たな謎が出てくる。そんなことを繰り返しながら、何回も観て楽しめる作品です。この作品ならではの楽しみ方として、日本語吹替版が字幕版をいかに忠実に再現しているか、聞き比べながら観ることをおすすめします」
田村さんへ一問一答
Q:好きな俳優は?
A:ロバート・デニーロ、アル・パチーノ、ダスティン・ホフマン。3人の芝居はリアル。自分が演技するときにも“リアル”が念頭にあります!
Q:子どものころから好きな映画は?
A:『バック・トゥ・ザ・フューチャー』日本映画なら、『男はつらいよ』が大好きです。かなり語れます(笑)
Q:最近観た映画は?
A:ノーラン監督の『インソムニア』アル・パチーノが不眠症で苦しむ芝居、よかったです!
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Tenet (C) 2020 Warner Bros. EntertainmentInc. All rights reserved.
新たに日本語吹替版を収録!
ジョン・デヴィッド・ワシントン演じる主人公の名もなき男をチャドウィック・ボーズマンの吹替で知られる田村真、その相棒でロバート・パティンソン演じるニールを「おそ松さん」「鬼滅の刃」の櫻井孝宏が担当している。