名優の人生をキャリア中心に振り返る不定期連載がスタート。息の長い俳優とは、どんな人物かを紐解いていきます。公開間近の『ファーザー』でオスカー候補に挙がるアンソニー・ホプキンスの83歳にして現役感溢れるバイオグラフィーを紹介!(文・大森さわこ/デジタル編集・スクリーン編集部)

1960年代

舞台で実力を鍛えて映画デビュー

画像: 『鏡の国の戦争』にはエイヴリー役で出演

『鏡の国の戦争』にはエイヴリー役で出演

当時のホプキンスは主に舞台で活躍。ロンドンのナショナルシアターでは、英国を代表する名優ローレンス・オリヴィエのスタンドインもつとめ、オリヴィエもその実力を認めていた。

映画の本格的なデビューとなったのは舞台劇の映画化『冬のライオン』(1968)。後にイングランド王となるリチャード一世を演じて評価され、英国アカデミー賞助演男優賞候補となる。

その後はジョン・ル・カレ原作のミステリー『鏡の国の戦争』(1969)にも出演している。

1970年代

名監督との出会い

画像: 『遠すぎた橋』で初来日。本誌取材を受ける

『遠すぎた橋』で初来日。本誌取材を受ける

この時代、ホプキンスは名監督リチャード・アッテンボローと運命的な出会いを果たす。議員役を演じた『戦争と冒険』(1972)、連合国軍の中佐役の『遠すぎた橋』(1977)、ミステリーの『マジック』(1978)と3本の監督作に出演。

『遠すぎた橋』では初来日も果たし、歌舞伎などを鑑賞した。『マジック』では腹話術師として人気を得る魔術師を演じて英国アカデミー賞主演男優賞候補となる。後のレクター博士にも通じる不気味な人物像を作り上げた。

1980年代

話題作にも出演する

『ヒットラー最期の日』でエミー賞主演男優賞

実力が映画界でも認められてきたホプキンスは世界中で大きな話題を呼んだデヴィッド・リンチ監督の『エレファント・マン』(1980)に出演。異端の主人公に興味を持つドクターに扮して、知的な顔を見せてくれた。

また、メル・ギブソン共演の『バウンティ/愛と反乱の航海』(1984)では部下たちの反乱に苦悩する船長を演じ、俳優として貫禄を見せ始めた。

また、テレビ映画『ヒットラー最期の日』(1981)では独裁者ヒットラーに扮してエミー賞を受賞。

1990年代

オスカー男優となり大活躍

画像: 『羊たちの沈黙』ハンニバル・レクター役

『羊たちの沈黙』ハンニバル・レクター役

遂にブレイクの時がやってきた。『羊たちの沈黙』(1991)で最高の知性と残虐性を持つレクター博士を演じてアカデミー主演男優賞を獲得。また、『日の名残り』(1993)では職務に忠実な英国の執事役で静かな名演を見せ、2度目のアカデミー賞候補となる。

その後、『ニクソン』(1995)、『アミスタッド』(1997)でもオスカー候補となり、90年代に絶頂期を迎えた。博士役の『ドラキュラ』(1992)、C・S・ルイス役の『永遠の愛に生きて』(1993)、ピカソを演じた『サバイビング・ピカソ』(1996)、死神を描いた『ジョー・ブラックをよろしく』(1998)、活劇『マスク・オブ・ゾロ』(1998)等にも出演。

2000年代

安定期に入り、レクター役にも再挑戦

『ハンニバル』では奥様と一緒に来日

2000年代に入っても勢いは衰えない。『羊たちの沈黙』の続編『ハンニバル』(2001)ではレクター博士の後日談が語られるが、今回は前作以上にホプキンスの出番が増え、当たり役に再挑戦した。

また、出番は少しだが、『レッド・ドラゴン』(2002)でもレクター役。新世紀に入ってもレクター伝説は続き、2007年には英国のBFIがレクター役を<映画史上最高の悪役>に認定した。

演技の幅が広いホプキンスゆえ、この役に縛られることなく、『白いカラス』(2003)、『世界最速のインディアン』(2005)、『最終目的地』(2009)といった作品でも味のある演技を披露している。

2010年代

まだまだ、挑戦は終わらない

画像: 『2人のローマ教皇』にてジョナサン・プライスと共に

『2人のローマ教皇』にてジョナサン・プライスと共に

年を重ねてもホプキンスの挑戦は終わらない。アメコミの映画化にも挑み、『マイティ・ソー』シリーズ(2011~17)では主人公の父である国王役を演じた。

また、『ヒッチコック』(2012)では映画の神様、アルフレッド・ヒッチコック役。本人とは体型も髪型も異なるため、特殊メイクの助けをかりて大変身してみせた。

テレビドラマの人気作品『ウエストワールド』(2016)では天才博士役で貫禄を見せ、エミー賞の主演男優賞候補。また、ネットフリックス制作の会話劇『2人のローマ教皇』(2019)では元ローマ教皇のベネディクト16世に扮してアカデミー賞の助演男優賞候補となっている。

2020年代

『ファーザー』で演じて見せた人生の夕暮れ期

画像: 『ファーザー』で演じて見せた人生の夕暮れ期

ホプキンスがアカデミー主演男優賞候補となった新作で、原作は舞台劇。舞台出身のホプキンスゆえ、今回の作品に大きなやりがいを感じたのではないだろうか。

アルツハイマー病をわずらった主人公の視点で物語が進むが、それがどこまで現実なのか、見る人には分からない。役の名前はアンソニーで、ホプキンスの実年齢と同い年の人物像ゆえ、彼自身も重なって見える。

途中で軽くタップダンスを踊ったり、お茶目な個性が生きた場面もあるが、後半は壮絶な展開で見る人を圧倒! 舞台ならスタンディング・オベーションを送りたくなる新たな名演を見せている。

スタッフが語るアンソニーの魅力

監督/フロリアン・ゼレール

「アンソニーを役に起用したのは、彼には深い認識があると思ったからです。老いと死に対する認識がね。老いを表現するのは勇気のいることです。アンソニー・ホプキンスのような活力にあふれた俳優が悲痛なプロセスを演じることに魅力を感じました」

脚本/クリストファー・ハンプトン

「私の脚本デビュー作は、彼が主演の『A Doll'sHouse』で、『TheGood Father』もご一緒しました。これらの役にはアンソニーのあらゆる側面が含まれていて、本当の彼が垣間見られます。今作は、会って5分で出演を決めてくれてとてつもなく興奮しました!」

This article is a sponsored article by
''.