最新インタビューを通して編集部が特に注目する一人に光をあてる“今月の顔”。『ジェントルメン』、『ビーチ・バム まじめに不真面目』と話題の2作品の主演を務めたマシュー・マコノヒーをピックアップ。映画の話はもちろん、普段のマシューの様子が伺える、ユーモアたっぷりのインタビューをお届けします!(文・成田陽子/デジタル編集・スクリーン編集部)

“ストレスが最も不健康! ユーモアを持って楽しく生きる、それがモットー”

Photos by Ernesto Ruscio/Getty Images

マシュー・マコノヒー

1969年11月4日。米・テキサス州出身。『ダラス・バイヤーズクラブ』(2013)で実在したエイズ患者を熱演しアカデミー賞とゴールデン・グローブ賞の主演男優賞をダブル受賞。『バッド・チューニング』(1993)で映画デビューし、以降『評決のとき』(1996)、『コンタクト』(1997)、『リンカーン弁護士』(2012)、『ダークタワー』(2017)等の話題作に。近年はプロデュース業にも進出し、TVシリーズ『TRUE DETECTIVE /トゥルー・ディテクティブ』(2014~2019)では主演と製作総指揮を務める。

── 映画『ジェントルメン』にちなみ、正真正銘の紳士の資格についてどう考えていますか?

「本物のジェントルマンは絶対にそこに居ない人の話をしない。つまり噂とか陰口を叩かないんだ。

代わりに自分の話を面白おかしく、その場を盛り上げて会話を進める才能を持っている。そして、他人の同意など求めない。自分の行為に責任と自信を持っているからね」

── ガイ・リッチー監督の現場はいかがでしたか?

「ガイはその場その場ですぐに台詞を変えてしまうんだ。喋っているそばから、“あ、もっと良いのが浮かんだ!”って、メモを渡してくるからもう大変。

いつも気が気じゃなくて浮き足立ってしまうけど、慣れてくると、やっぱり流石にずっと良いセリフになるなあって感心してしまう。彼のセリフは必ずリズミカルで、独特のニュアンスがあって、それがガイ・リッチー節になるんだね。

一応リハーサルはするけれど、この場で彼は全体のトーンやらスピードを考え直して、そしてその上で現場でのインスタント変更となるわけだ。おまけに彼は物凄いおしゃれで、僕らの衣装に対するアイデアを聞いては“このほうがずっと良いから、こちらに!”なんて、すばやくチェンジしてね。

彼の行きつけのテイラーがあって、僕ら用に迷いなく選んで、そのスタイリングと趣味が素晴らしい。その上、彼はアッパークラスの出身だから僕の役の背景に役立てるようにと狐狩りとか、庭園での昼食会などに連れて行ってくれて、ここで僕は貴族的な人々の雰囲気、喋り方、動作、表情などを間近に見て、さすが英国の階級社会! と改めて仰天したりね。

そういう彼だからこそ、アウトローの悪い奴らの世界を描くことに凝っているんだよ」

── 英国について、好きなところ、嫌いなところは?

「僕の好きな都市ランキングでロンドンは6番目なんだ。オリンピック以降からロンドンは格段に良くなった。

街はクリーンになり、エネルギーにあふれて、食べ物はぐんと向上して、国際的になったね。以前は食べられるのはフィッシュ・アンド・チップスぐらいのものだったが、今はエスニックでもなんでもあって、充分に美味しいんだ。そう、街がぐんとセクシーになったよね。

貴族やら上流社会の世界での『キジ狩り』なんてエレガントな行事に参加すると“こういう生活も悪くはないなあ”と思うけれど、ブレグジット(EU離脱)からの、国民分裂化が生んだ低所得層の不満が渦巻いているのは、国際的な流れとは言え、かなり不安要素を含んでいると思うね。ともかく、僕は昔から英国は大好きな国のひとつだよ」

── 1年半前に50歳になって、半世紀生きてきた心境を。

「50歳を記念して、1年にふたり友達が出来たという計算で合計100人の友人を砂漠に招待したんだ。何を着るかと天候のみの情報を与えて、行く先も知らせず『誘拐』してね。

合計88時間、僕らは砂漠でやりたい放題の一大パーテイーをしたんだ。楽しかったし、僕にとっても友達にとっても忘れられない良い思い出になったと思う。引退なんて考えたこともない! 毎日ゴルフだ、釣りだ、ヨットでお気楽ライフなんて絶対に嫌だね。

これからの半世紀を家族と有意義に生きていきたい。ストレスが最も不健康な要素だからユーモアを持って、楽しく生きる、それがモットーと言えるかもね」

── 母校のテキサス大で教授をしているそうですね。

「そう。6年前から『スクリプトからスクリーンへ』という講義を受け持っている。今まで僕が27年間映画の現場で経験してきたことを基に、映画が出来上がるプロセス、その問題点、アイデアなどなど盛り沢山に教えているんだよ。

実際はいくら映画科を専攻しても大して役には立たない。大学で学んだことなど、僕が初めての映画の現場で30日ぐらい見聞したことの2割にも満たないということ。

まず脚本を描いてもまずそのオリジナルと全く違う作品になってしまう、ほとんどが編集で大幅にカットされてしまう、予算が変わるたびにも脚本はどんどんと変わって行く。

そういった現実的な映画作りの難点を指摘して、どのようにも順応するように、しかし自分の信念を曲げたりせず、オリジナルの作品を維持していく方法、そういう事を教えているが非常に人気があるのは嬉しいことだ。

テキサス州のオースティンにあるキャンパスだから、外に出ると音楽、アート、娯楽など文化が満タンの街なので学生たちも毎日刺激を受けて良い環境に恵まれているしね」

── 最後に『ビーチ・バム まじめに不真面目』についても一言!

画像: SCREEN誌を手に持ってパチリ。現在の健康とバランスの良い生活について「非常にタフで賢いカミラのおかげ」と愛妻に感謝も。

SCREEN誌を手に持ってパチリ。現在の健康とバランスの良い生活について「非常にタフで賢いカミラのおかげ」と愛妻に感謝も。

「アナーキーでアルコール中毒になっても二日酔いが発生しないハチャメチャな休暇、全く論理なし、歓びのエピデミック。たった82ページの超短い脚本で、監督がハメを外して描いたとしか思えないお遊び映画(笑)。

スヌープ・ドッグとの共演はあまりに風変わりなペースで、想定外の場面が続出して二人で顔を見合っては“?”マークだったよ。僕が※昔裸でボンゴを叩いた事件の再現かって? ま、みんなハイになっている時代だったから細かいことは覚えていないんだけれどもね(笑)。僕の映画史上でも最高にヘンテコで、愉快な撮影体験だったよ」

※1999年、自宅で数日間ぶっ通しのパーティーを開いた際に、素っ裸の彼がボンゴを叩いて踊り狂っていたというもはやネタ化している事件。近所の住民によって通報された。

『ジェントルメン』
2021年5月7日(金)公開

画像: © 2020 Coach Films UK Ltd. All Rights Reserved.
© 2020 Coach Films UK Ltd. All Rights Reserved.

監督・脚本・製作:ガイ・リッチー
配給:キノフィルムズ
出演:マシュー・マコノヒー、チャーリー・ハナム、ヘンリー・ゴールディング、ミシェル・ドッカリー、ジェレミー・ストロング、エディ・マーサン、コリン・ファレル、ヒュー・グラント

長年にわたる大麻の大量栽培で財を成したアメリカ人ミッキー(マコノヒー)が、引退するというウワサにロンドンの暗黒街に激震が走った。その利権総額なんと500億円! 目の色変えた強欲なユダヤ人大富豪(ストロング)、ゴシップ紙の編集長(マーサン)、ゲスな私立探偵(グラント)、チャイニーズ&ロシアン・マフィア、さらには下町のチーマーまで……。一筋縄ではいかないジェントルメン=一流のワルたちによるスリリングな駆け引きが始まる。

『ビーチ・バム まじめに不真面目』
2021年4月30日(金)公開

画像: ©2019 BEACH BUM FILM HOLDINGS LLC.ALL RIGHTS RESERVED.
©2019 BEACH BUM FILM HOLDINGS LLC.ALL RIGHTS RESERVED.

配給:キノシネマ
監督:ハーモニー・コリン
出演:マシュー・マコノヒー、スヌープ・ドッグ、アイラ・フィッシャー、ステファニア・オーウェン、ザック・エフロン

かつて天才と呼ばれた詩人ムーンドッグ(マコノヒー)の愉快な旅を描いた、ハーモニー・コリンの7年ぶりの最新作。

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