サム&タスカーの思い出を追体験
長い時間を共にしてきたサムとタスカーの物語。深い信頼と愛を積み重ねてきたふたりは久しぶりに湖水地方に車で旅に出る。のどかで平和な時間に思えるが、実は心の奥には不安や恐怖がある。
タスカーが不治の病にかかり、やがて記憶を失う日が来るからだ。お互いを思うからこそ、別々の決断を下そうとするが、やがて、それぞれの本音をぶつけ合い、その愛の力が試される時が来る──。
愛し合うカップルの人間ドラマゆえ、ふたりの演技が映画の支柱となる。サム役のコリン・ファースは、若い頃、ミュージシャンをめざしていたそうなのでピアニスト役は適役。最後は自身のピアノ演奏も披露する。
タスカー役のスタンリー・トゥッチは演技だけではなく、監督や脚本業もこなす才人ゆえ、作家役も納得できる。そんなふたりの相性の良さにも驚かされる。私生活でも友人同士なのが、長年連れ添ったカップルのリアリティを出している。
『英国王のスピーチ』(2010)でオスカー主演男優賞受賞のファースは、静かな役だが、後半では内側に潜む激しい感情を相手にぶつける。対して『ラブリーボーン』(2009)でオスカー助演賞候補のトゥッチは、状況を冷静に見ることができる知的な役柄。
ふたりの微妙な表情の変化が見事で、最後は愛の真実について考えさせられる。舞台となる湖水地方はピーター・ラビットが誕生した土地としても知られているが、息を飲む美しい田園風景が登場。ふたりの愛の旅路を盛り上げる。
サム&タスカーについて
サム(コリン・ファース)
クラシックのピアニスト。近年は演奏活動を控えていたが、久しぶりにコンサートが予定されている。物静かな性格で、ふだんは感情をはっきり出さない。
タスカーを心から愛していて、彼に添い遂げたいと考えている。不治の病を抱えるタスカ―にまた小説を書いてほしいと考え、力になろうとする。そして、タスカーの思わぬ決断を知ると、内側に秘めていた激しい感情がわき上がり、タスカーと正面から向き合うことになる。
タスカー(スタンリー・トゥッチ)
作家であるが、病をわずらってからは作品を発表していない。物書きらしく、いつも冷静な眼差しで状況を見ようとする。
皮肉屋でもあり、時おりサムを困らせるような冗談も言う。サムに犬をプレゼントし、ふたりでかわいがっている。天体にも詳しく、スーパーノヴァと呼ばれる星についてサムに解説する。不治の病にかかっているが、将来、サムに負担をかけたくないと考え、秘かにある決断を下している。
『スーパーノヴァ』見どころ
キャンピングカーの旅
サムとタスカーは古いキャンピングカーで湖水地方に旅に出る。タスカーはカーナビの声が嫌いで、紙の地図で行き先を確認する。
旅先のスーパーで食材を買い込み、料理はサムが作る。車の中で寝泊まりしているが、傍らにはタスカーがサムに贈った愛犬がいる。
ダイナーでの何げない会話
作家のタスカーはちょっと皮肉なジョークを言うこともある。旅の途中でダイナーによると、ウエイトレスがサムを見ている。
彼女に頼まれもしないのに、「彼は不愛想だが、サインがほしいなら、それくらいはするよ」と唐突な発言をしてサムを困惑させる。
思い出の地での天体観測
天体に詳しいタスカーはサムに星の話をする。スーパーノヴァという星は砕け散る前に1番強い光を放つ、とタスカーは言う。
旅の途中でふたりは思い出の地も訪ねる。ふたりの愛が始まった場所で、以前と同じように美しい自然の風景が広がっている。
サプライズ・パーティ
旅の途中で寄ったのはサムの生家。そこには姉一家が住んでいて、ふたりを温かく迎え入れる。ある時、サムが外出先から戻ると人の気配がない。
サムはあわてるが、実は秘かにサプライズ・パーティが予定されていてタスカーや仲間たちがサムを驚かせる。