タスカー役 スタンリー・トゥッチ インタビュー
ゲイ同士の愛が、ストレート同士と違うなんて、考えられない。愛は愛。それだけだ
スタンリー・トゥッチ
1960年11月11日生まれ、米・ニューヨーク州出身。演技を学び82年にブロードウェイデビュー、85年に映画デビュー。2009年に『ラブリーボーン』でアカデミー賞助演男優賞にノミネート。2017年には、監督作『ジャコメッティ 最後の肖像』をベルリン国際映画祭で発表した。
主な出演作に『アメリカン・スウィートハート』(2001)、『プラダを着た悪魔』(2006)、『トランスフォーマー/ロストエイジ』(2014)等。ほか、テレビドラマや舞台、演出家としても活躍。2冊の料理本を発売しベストセラーにもなっている。
── コリンを相手役に推薦したんですよね?
「僕は、またコリンと何かしたいとずっと思っていた。僕の映画の出演を何度か依頼したことがあるんだけど、その度に断わられた。
それでもまた一緒に仕事をしたいと思っていた。この脚本を読んだ時、思ったんだ。『適役を知っているぞ』とね」
── もともと親友だったと。
「僕たちは、本当に長い付き合いなんだ。しばらく会っていなくても、再会したときにはまるで時間が経っていないように感じるような友だちなんだよ。
一緒にいることが快適で、お互いに即興もできるし、冗談も言える。役柄としての相手をよく知ろうとする前に、お互いを理解しようとする必要もない。彼は僕にとって親友だし、僕たちはお互いのすべてを知っている。
僕たちのその背景をカメラの前に据えたら、それで仕事は半分できた。さらに素晴らしい脚本があれば、あとは何もしなくてもいいようなものだ」
── 脚本には、ふたりの関係を多く描かれてなかったように思います。
「ふたりの関係のすべてが書かれていなくても、それは必要じゃない。俳優としての僕には必要ではなかった。なぜなら、それらはもし実際そこになかったとしても、存在しているから。行間にあるんだよ。
僕は最初の妻と、彼女が亡くなるまで18年連れ添った。彼女は4年もがんと闘い、そして逝った。ある人とそのくらい長く一緒に過ごし、その人をよく知り、そして誰かがこのようなものを書いたら、それ以外のことは知らなくてもいいんだよ」
── コリンと共演して改めて感じたことは?
「コリンとの共演はすごく楽しいんだ。まず何よりも、彼は親友だ。しかしその次に、僕は彼の大ファンであり、演技を見ていて楽しい俳優と共演できるなんて、最高なんだ。
コリンには、多くの俳優にはない鋭さがある。彼は物事と衝突して演技するのではなく、物事に逆らって演技する。目や顔ですべてを表現する。すべてを持っていて、さらにユーモアのセンスもある。ユーモアのセンスがなければ、いい俳優にはなれない」
── 主人公のカップルが同性同士だったことについて。
「これは愛し合うふたりの物語であって、その彼らがたまたまゲイだったということなんだ。これを異性愛のカップルに置き換えることは容易だが、それはどちらでもいいことだ。
だが同時に、これがゲイのカップルだということが、ほかのあらゆる要素を加えることになり、私は観客にとってそれが本当に重要だと思う。同性愛者が別物だという考えは、誰がそう思いついたかは知らないけれど、確かに長い間続いてきた概念だ。
でもゲイ同士の愛が、ストレート同士の愛と違うなんて、考えられない。愛は愛。それだけだ。それ以上議論するべきことはない」
メイキング
「コリンのイングランド人らしさに対して、スタンリーはいかにもアメリカ人なのが完璧に調和していた。ふたりは元もと親友同士だから、この作品の核である20年来の深い付き合いでお互いを知り尽くす主人公ふたりの親密さと相性のよさを醸し出すことができた」(ハリー・マックイーン監督)
スーパーノヴァ
2021年7月1日(木)公開
〜ストーリー〜
サム(ファース)とタスカー(トゥッチ)は20年間、連れ添ってきたカップル。ふたりは久しぶりに古いキャンピングカーで湖水地方に旅に出る。
かつて愛が始まった思い出の地を経由して、サムの姉たちが住む彼の生家に到着。なつかしい仲間たちとも再会する。なごやかな時間が過ぎるが、実はふたりの心には大きな不安がある。
タスカーが不治の病に侵され、記憶を失う日がやってくるからだ。そして、サムはタスカーのある決断に衝撃を受ける……。
イギリス/2020/1時間35分/ギャガ
監督:ハリー・マックイーン
出演:コリン・ファース、スタンリー・トゥッチ
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