細田守監督最新作『竜とそばかすの姫』が2021年7月16日より公開。スタジオ地図設立10周年の記念すべき年に公開される本作に込めた思い、日本国内のみならず、海外の才能が集結し作り上げた唯一無二の世界観、「スタジオ地図」のこれからについて語ってもらった。(文・タナカシノブ/写真・加藤 岳/デジタル編集・スクリーン編集部)

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設立10周年!細田監督が思い描く未来の「スタジオ地図」とは

── スタジオ地図設立10周年を迎えた今の心境を教えてください。

画像1: 設立10周年!細田監督が思い描く未来の「スタジオ地図」とは

作品を1本完成させても、次が作れる保証がないのが映画の世界。スタジオ地図は、例えば、僕が所属していた東映動画のように、1本や2本作品がコケても大丈夫という会社ではありません。誰かから依頼されているわけでもなく、自分たちで“これを作ろう”と言って作品を作っているだけ。

先のことは分からないし、幸運なら11年目があるかもだし、もし11年目が来なくてもそれはそれで仕方ないと思っています。社員の心配はしていません。みんなスペシャリストなので、どこでも通用するスタッフばかりなので(笑)

── とはいえ、3年に1度は細田作品が観られるという期待はあります。次の構想はすでにあるのでしょうか?

出来上がった作品への反応を観て考えることが多いです。今、ちょうどグッと世の中が変化している時期なので、それを端的に表すようなものはあるかな、というアイデアはふんわりと浮かんだりしています。

近年、これだけ今までの常識が覆ったことなんてなかったですよね。コロナ禍だけでなく、例えば、公民権運動から何十年も経っている今、“ブラック・ライヴズ・マター”運動や女性の人権に対して、解決が急務な理由はなんだろうと考えたりします。(前号のアカデミー特集号を手にとりながら)アカデミー賞だって、ほんの数年前まで“ホワイトウォッシュ”だと騒いでいたのに、今年の受賞作を見たら、変化しすぎであることは一目瞭然。世の中がどう変化して、価値観がどう変わっていくのか、そういう流れの真っ只中に僕たちはいるんです。

映画は現実に起きていることを反映するもの。期せずして、『そばかす』もコロナ禍の影響で現実っぽい作品になりました。コロナ禍でなければ、もっと近未来的な雰囲気の作品に見えたはずだけど、世の中の変化で、ネットと現実の世界がグッと近づき、リアルな作品になった気がしています。

── 変わるものがある中で、変わらないものがあることを描いていきたいと考えていますか?

「僕の大好きな『美女と野獣』は、物語としては18世紀からずっとあるもの。時が経っても映画のモチーフになり続けるということは、伝え継いでいくべき大事なものがあるから。と同時に、時代ごとにそういった作品がどのような意味を持つのかは、時代ごとに変化しているからこそ、常にメッセージのアップデートが必要だと考えています。

画像2: 設立10周年!細田監督が思い描く未来の「スタジオ地図」とは

『そばかす』でいえば、そばかすだらけで教室の隅っこにいるような女の子が美女に見えるかどうか、そこに注力して作ったつもりだし、そう見えるように描き切れたという自信はあります。

── スタジオ地図の未来をどうイメージしていますか?

どうなっていくんだろう(笑)。映画を作ったその先に何があるのか、どうなっていくのかはわからない、というのが正直な気持ちです。でも、近年、配信などが元気なおかげで、世界中のあらゆる作品に誰でもアクセスしやすくなったのは、本当にありがたいことですし、うれしいと感じています。国や言語の障壁を超えるのが大変だったのが嘘のように、今は、垣根が低くなっています。僕たちの作品もいろいろな国で手軽に観ていただけるようになりました。

少しでも多くの人に作品が届く環境は素晴らしいの一言です。日本のアニメファンだけでなく、世界中のアニメファン、そしてアニメファンでなくてもちょっと観てみようという感覚でアクセスできるなんて夢のようですよね。そういったことを『そばかす』でも伝えられればいいなと思って作りました。

スタジオ地図の行方は、あまり深く考えず、いろんな人に観ていただきたい、そういう気持ちで作品を作り続けられたら幸せです。

竜とそばかすの姫
2021年7月16日(金)全国公開

画像2: 7/16公開『竜とそばかすの姫』細田守監督スペシャルインタビュー スタジオ地図の描く未来とは?

<あらすじ>
幼い頃に母を亡くし、高知の田舎町で父とふたりで暮らす17歳の女子高生・すずは、ある日、全世界で50億人以上が集う超巨大インターネット仮想世界〈U〉に、歌姫「ベル」として参加。母の死をきっかけに歌うことができなくなっていたすずだが、〈U〉では自然と自ら作った歌を披露でき、その歌声で世界から注目される存在に。

そんな矢先、ベルの前に〈U〉で忌み嫌われる「竜」と呼ばれる謎の存在が現れる。すず(ベル)と竜が出逢った先に一体どんな物語が待っているのか、竜の正体とはいったい…!?

配給:東宝
原作・脚本・監督:細田 守
声の出演:中村佳穂、成田凌、染谷将太、玉城ティナ、幾田りら/役所広司/佐藤健
©2021 スタジオ地図

©2021 スタジオ地図

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