2022年4月現在も続いているロシアによるウクライナの軍事侵略行為。いつ終わるとも知れないこの悲惨な事態に、世界中の注目が集まっています。そんな中、ウクライナを支援する声は世界中に巻き起こっていますが、そもそもウクライナという国や国民を私たちはどれだけ知っているでしょうか。そこで映画を通して描かれてきたウクライナを振り返り、この国への理解を深めてみましょう。(文・松坂克己/デジタル編集・スクリーン編集部)

2022年2月24日、ロシアがウクライナに武力侵攻した。戦いは4月現在も続いており、何度か停戦交渉も持たれたが未だ先行きは不透明だ。もともとウクライナはソビエト連邦の一部だったがソ連崩壊を受けて1991年に独立、旧ソ連国家の中では西側寄りでEUやNATOへの加入を模索していた。だが、2014年にはロシアがウクライナの一部クリミアを併合、以後もウクライナ支配を目論むロシアとの関係は緊迫状態が続いていたが、ついにロシアはプーチン大統領指揮下で直接武力侵攻を始めたのだ。

ウクライナという国は日本では馴染みが薄いかもしれないが、この国を舞台にした映画、ここで撮影された作品はタイトルを挙げれば知っているものも多いはず。今回は映画を通してウクライナという国に興味を持ってもらおう。

あの名作映画でも描かれていたウクライナ

画像: ウクライナの国花が象徴的なシーンで登場する『ひまわり』(1970)

ウクライナの国花が象徴的なシーンで登場する『ひまわり』(1970)

最近各地で再上映されている名作『ひまわり』(1970)ではソフィア・ローレン演じる妻が出征して戻らない夫を探して第二次大戦後のソ連を訪れるが、そこで見られた広大なひまわり畑はウクライナ南部で撮影されたもの。ちなみにひまわりはウクライナの国花だ。ミュージカルの傑作『屋根の上のバイオリン弾き』(1971)はロシア革命前夜のユダヤ人迫害を背景に、ウクライナのユダヤ人一家を描いたドラマ。娘たちの結婚問題に悩まされながらも幸せな生活を送っていたテビエ一家だったが、ユダヤ人の国外追放が始まる。

画像: 『屋根の上のバイオリン弾き』(1971)はウクライナのユダヤ人たちのドラマ

『屋根の上のバイオリン弾き』(1971)はウクライナのユダヤ人たちのドラマ

ほかにも、第一次ロシア革命のきっかけとなった事件をセルゲイ・エイゼンシュテインがモンタージュ理論を駆使して描き乳母車の“オデッサの階段”落ちが有名な『戦艦ポチョムキン』(1925)、ソ連初期の国策・農場共同化を背景にした『大地』(1930)、16世紀のポーランドやトルコの侵略によるウクライナの戦乱をコサックを通して描いた『隊長ブーリバ』(1962)、カルパチア地方の古い伝統を守る人々の悲恋物語をファンタジーとして描く『火の馬』(1964)などがウクライナを舞台にしている。

画像: 『戦艦ポチョムキン』(1925)の“オデッサの階段”と呼ばれる名シーン

『戦艦ポチョムキン』(1925)の“オデッサの階段”と呼ばれる名シーン

アクション映画のロケ地にもなっていた

一方、ウクライナは独立以降は欧米映画のロケ地としても度々登場しており、ジャッキー・チェンの『ファイナル・プロジェクト』(1996)、ジェイソン・ステイサムの『トランスポーター3 アンリミテッド』(2008)、ジャン=クロード・ヴァン・ダムの『ユニバーサル・ソルジャー:リジェネレーション』(2009)、ブルース・ウィリスの『ダイ・ハード/ラスト・デイ』(2013)といったアクション映画はストーリーにウクライナが絡み、撮影の一部がウクライナで行なわれた。

画像: 『TENET テネット』(2020)の冒頭のシーンもウクライナが舞台だった

『TENET テネット』(2020)の冒頭のシーンもウクライナが舞台だった

近年で記憶に新しいところではクリストファー・ノーラン監督のアクションSF大作『TENET テネット』(2020)の冒頭のオペラハウスのシーンがウクライナだった。またアクションではないが、イライジャ・ウッドの『僕の大事なコレクション』(2005)やニコラス・ケイジの『ロード・オブ・ウォー』(2005)もウクライナが重要な舞台になっていた。

画像: 主人公がウクライナに向かう『僕の大事なコレクション』(2005)

主人公がウクライナに向かう『僕の大事なコレクション』(2005)

画像: 冷戦終結直後のウクライナが舞台となる『ロード・オブ・ウォー』(2005)

冷戦終結直後のウクライナが舞台となる『ロード・オブ・ウォー』(2005)

チェルノブイリ(チョルノービリ)原発事故で立入制限区域となった近郊の都市プリピャチの住民の悲惨な運命を描いたドラマ『故郷よ』(2011)もあった。さらに15年の歳月と莫大な費用をかけて製作された異色作『DAU.ナターシャ』(2020)『DAU.退行』(2020)はソ連時代の研究都市ハルキウに大セット建設して撮影を行っている。

画像: 『故郷よ』(2011)の主演オルガ・キュリレンコはウクライナ出身

『故郷よ』(2011)の主演オルガ・キュリレンコはウクライナ出身

第二次大戦中はウクライナはソ連の一部でありナチスと戦っていたが、ポーランド、ソ連にも一時的に領土を割譲されていたため、ポーランドのアグニェシュカ・ホランド監督がナチス支配下の都市で地下水道にユダヤ人を匿った男の実話を描いた『ソハの地下水道』(2011)の舞台は当時ポーランド領だったルブフだったが、現在この都市はウクライナの領土となってリビウとなっている。

画像: 『ソハの地下水道』(2011)はポーランド時代の現ウクライナ・リビウが舞台

『ソハの地下水道』(2011)はポーランド時代の現ウクライナ・リビウが舞台

ホランド監督は、スターリン政権下の1932年から翌年にかけて起こった大飢饉を題材にした『赤い闇 スターリンの冷たい大地で』(2019)も撮っている。この大飢饉はホロドモールと呼ばれ、のちにウクライナ人に対するジェノサイドとして認定されている。

画像: 『赤い闇 スターリンの冷たい大地で』(2019)は凍てつくウクライナが重要な意味を

『赤い闇 スターリンの冷たい大地で』(2019)は凍てつくウクライナが重要な意味を

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