過去パートは中学生が雫と聖司を演じることが大事
──『耳をすませば』は柊あおいさんが1989年に『りぼん』で発表したコミックで、スタジオジブリが1995年にアニメ映画化して大ヒットしました。今回、なぜ実写化したのでしょうか。
この企画を立ち上げたのは6年くらい前になります。その頃、異動で映画を製作する部署に配属され、企画を立てることになり、“自分が企画するなら、いちばん好きな作品をやりたい”と思ったのです。当時はまだ若くて熱かったんですね。今だったらいろんなことを経験して、むしろこの企画は出てこなかったと思います(笑)。そのときは同期の男性プロデューサーもいて、2人で何が好きかを雑談しているときに、共通点が『耳をすませば』でした。2人とも原作コミックもジブリのアニメも大好きで、「耳すま、やろう」と盛り上がったのです。
──10年後のオリジナルストーリーに原作の物語を回想として挟み込むという二重構造ですね。
学生モノは20代の俳優が制服を着て、演じることもよくあるかと思います。それがいけないというわけでは全くないのですが、『耳をすませば』に関しては、それは難しいのではと思いました。例えば雫が聖司に向かって「やなヤツ、やなヤツ、やなヤツ、やなヤツ!」というセリフがありますが、これを20代の俳優が言ってもピュアさが出ません。とはいえ、オーディションで選んだ中学生の新人2人が主演を演じるのでは商業映画として成立させるのが難しい。
では2人が10歳くらい歳を取っていたらどうだろうと思いついたのです。柊先生に企画書を持っていったところ、「中学生が雫と聖司を演じることの方が大事です」とおっしゃっていただきました。そこからギアが上がって、企画が一気に進み始めたのです。
──脚本は平川雄一朗監督が書かれていますが、ストーリーは監督と西さんが相談して作っていかれたのでしょうか。
まずはプロデューサーサイドで脚本開発を進めていたのですが、平川監督に入ってもらってから、平川監督が全く新しい稿として書き上げたという感じです。ただ、細かい紆余曲折はいろいろあって、3年くらいかけて脚本を作り、最終的には何十稿にもなっていました。