がんを宣告された主人公とその母親が信頼できる医師と出会い、限られた時間のなかで人生を見つめ直し、穏やかに死と対峙する。カトリーヌ・ドヌーヴとブノワ・マジメルが共演する映画『愛する人に伝える言葉』が10月7日に公開される。監督を務めたのは女優としても活躍するエマニュエル・ベルコ。ドヌーヴとマジメルが共演した『太陽のめざめ』(2015)がカンヌ国際映画祭のオープニングを飾り、監督としても2人からの信頼が厚い。死を語ることで逆説的に生を描き、その尊さを見つめたベルコ監督に着想のきっかけやドヌーヴの魅力について語ってもらった。(取材・文/ほりきみき)

ガブリエル・サラ医師との出会いで決まった作品の方向性

──もしも自分が末期がんになったら、主人公のように最期を迎えたい。作品を見終わったときにそんな気持ちになりました。物語の着想はどこから得たのでしょうか。

カトリーヌ・ドヌーヴとブノワ・マジメルを親子にし、母が息子をがんで喪うメロドラマを撮りたい。そう思って、脚本を書き始めていた頃、NYで行われた『太陽のめざめ』の上映でガブリエル・サラ医師に出会いました。サラ医師は上映後のトークを聞き、「私の病院はあなたの興味をかき立てるはず。見学にいらしてみませんか」と誘ってくれたのです。がん専門医に出会えたのは偶然でしたが、それをきっかけに母と息子のデュオの物語が、医師を加えたトリオの物語になりました。決まっていた話が全く違う方向に走り始めたのです。

画像: (左から)カトリーヌ・ドヌーヴ(クリスタル役)、ブノワ・マジメル(バンジャマン役)

(左から)カトリーヌ・ドヌーヴ(クリスタル役)、ブノワ・マジメル(バンジャマン役)

──カトリーヌ・ドヌーヴとブノワ・マジメルが共演する作品を撮りたかったとのことですが、お二人は『太陽のめざめ』(2015年)にも出演されています。

ブノワには次の『150ミリグラム ある女医の告発』(2016年)にも出てもらったので、3作品続けて一緒に仕事をしています。カトリーヌはその作品には出演していませんが、『ミス・ブルターニュの恋』(2013年)に出演しているので、やはり本作が3作目。お二人とも「もう一回一緒に仕事をしたい」と思っていました。それが偶然、一緒になったのです。『太陽のめざめ』は感情的に繋がりのある関係ではなかったので、今回はあえて家族にしました。

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