ドラマ「イチケイのカラス」は自由奔放で型破りなクセ者裁判官・入間みちおと上昇志向が強い超ロジカルなエリート裁判官・坂間千鶴の2人がコミカルな掛け合いを見せつつ、<真実>のみを追求し、社会の闇を暴いていく姿を描いて話題になりました。映画『イチケイのカラス』が描くのはドラマから2年後。みちおは「職権発動」が通用しない国家機密に挑み、坂間は裁判官の“他職経験制度”で弁護士に期間限定で転職し、小さな事件にも全力投球していきます。引き続き演出を担当した田中亮監督にドラマから更にスケールアップしたストーリーと、魅力的なキャラクター達についてお話をうかがいました。(取材・文/ほりきみき)

竹野内豊が内包する入間みちおらしさが決め手

──竹野内豊さんが自由奔放で型破りな入間みちおを飄々と演じて、ドラマ「イチケイのカラス」は高視聴率を記録し、竹野内さんの代表作の1つになりました。浅見理都さんが描かれた原作コミックでは、入間みちおは主人公ではなく、ビジュアルもかなり違うそうですね。

原作を読ませていただいたところ、コミックで主人公の坂間真平も魅力的でしたが、入間みちおというキャラクターがとんでもなくチャーミングで、ビジュアルはともかく、映像的な魅力があると感じたのです。しかも、裁判官は人間性が見えにくい職業です。型破りな入間みちおが独自の視点で法律を駆使して事件を裁いていく姿を描いた方が、ドラマとして高揚感が出るのではないか。そう思って浅見先生に「みちおを主人公にさせてください」とお願いし、承諾していただきました。

──入間みちおに竹野内さんをキャスティングした決め手はどんなところだったのでしょうか。

竹野内さんとは以前、「BOSS」シリーズ(2009、2011年 フジテレビ)でご一緒したことがあるのですが、そのときに竹野内さんのチャーミングなところに魅力を感じたのです。そこに入間みちおの要素があると絶対的な確信があったので、作品設定やキャラクター造形が落ち着いてからお願いに行きました。

──竹野内さんはご自身の中にみちお的な部分があると思っていらっしゃいましたか。

ご本人は思っていらっしゃらなくて、「僕で大丈夫ですか」とすごく心配されていましたが、「大丈夫です。竹野内さんの中にみちおの要素があるので絶対にハマります。任せてください」と説得しました。竹野内豊さんの中からみちお的なチャーミングさをいかに引き出すか。僕の手腕が試された感じです。でも、竹野内さんご自身が脚本を読み込んで、ちゃんとキャラクターを作ってきてくださいました。

──原作で主人公だった坂間真平は坂間千鶴としてドラマに登場し、黒木華さんが演じていました。なぜ女性にしたのでしょうか。

バディものとして描こうとしたときに、男性2人よりも異性にした方がぶつかり合いや歩み寄りでいろんな感情が生まれやすい。ドラマを11話作る上での広がりを考えて、女性にしました。実際のところ、女性の裁判官も大勢活躍されていますから、裁判長、右陪席、左陪席と3人いたら、1人は女性というのは時代の流れ的にも自然なのではないかと思ったのです。

──坂間千鶴は入間みちおとは別のタイプの型破りで、これまで黒木さんが演じてこられた役とは大分イメージが違いますね。

何にでもなれる方なので、黒木華さんならやり切ってくれると最初から信頼していました。とはいえ、坂間の役は半端ないほど大変だったと思います。僕たちは“速射砲”と呼んでいましたが、法律用語を澱みなく早口でいう坂間ならではの台詞回しがありますし、僕の“坂間愛”が高じて、映画では走り回ったり、自転車を漕いだり、穴を掘ったりと台本にないことをやってもらいました。カロリーが非常に高い大変な役でしたが、こちらのオーダー以上の返しをしてくれる。黒木華は天性の女優だと改めて感じました。

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