主人公2人の問題はどこにでも起こり得る
──そもそも、なぜパードリックとコルムは友達になったのでしょうか。
映画で目の当たりにするのは、精神的に強く結ばれていた2人の友人の間に起きる大ゲンカです。本当の人間関係に起きる仲違いの悲しさを思いつくだけすべて注ぎ込みました。
喧嘩別れをすると、どちらも言い分があるでしょう。作品をご覧になった方がどんな風に感じるのかに興味があります。コルムとパードリックのどっちに共感するか。コルムが吐く辛辣なセリフにうなずくのか、それとも傷心のパードリックに同情するのか。あるいは、2人のどちらにも共感するところがあるのか。日々の暮らしで、誰もがコルムであったり、パードリックであったりするはずですから。
──監督は『ヒットマンズ・レクイエム』の少年や「ウィー・トーマス」のネコのように、物語に巻き込まれてしまう無垢な第三者をよく登場させますね。
今回はケリー・コンドンが演じたシボーン、バリー・コーガンが演じたドミニクがまさにそうですね。シボーンもドミニクも善良で純粋な人物で、仲違いする2人を仲直りさせようとパードリックの手助けをします。シボーンは将来の夢があり、島から出たいと思っています。そのために、兄のパードリックを深く愛しているものの、コルムの行動が理解でき、通じ合うものがあります。ドミニクはパードリックのようにのんきな男。この役柄はいい味を出しています。
──ドミニクもシボーンも問題を抱えています。それは、もしかすると、パードリックとコルムの絶交よりも、深刻なことかもしれません。
主人公2人の話だけにならないことが大事です。シボーンやドミニクの問題も描くことによって、島民が抱える孤立の問題やその先の共生についても見えてきて、どこにでも起こり得る問題であることがわかってきます。ドミニクの身に起きることに対して、擁護しようとする人と、そうでない人がいて、物語にまた違った別の次元が加わり、本当の姿を知らない人物を断罪する人間の性を掘り下げています。この映画は、単なる喧嘩別れの話ではないのです。