マーティン・マクドナー監督の『イニシェリン島の精霊』が公開されます。舞台はアイルランドの小さな架空の孤島イニシェリン島。『ヒットマンズ・レクイエム』でコンビを組んだコリン・ファレルとブレンダン・グリーソンを主人公に迎えて、友情が崩壊した男たちが引き起こす狂気の行く末を描き、賞レースを席巻。第80回ゴールデングローブ賞においては、作品賞(ミュージカル/コメディ部門)、主演男優賞(ミュージカル/コメディ部門)コリン・ファレル、脚本賞マーティン・マクドナーの最多3部門で受賞しました。本作について語ったマーティン・マクドナー監督のインタビューをSCREEN ONLINEでご紹介します(構成・ほりきみき)

衣装担当イマー・ニー・ヴァルドウニグの素晴らしい仕事ぶり

──小さな町イニシェリンにぽつねんと佇む酒場。コルムは長いコートをなびかせ、大きな帽子をかぶってうろつきます。西部劇を意識したようにも感じますが。

パードリックとコルムは片田舎の酒場で仲違いし、喧嘩になる。2人の流浪のガンマンのようなものです。最初から西部劇の世界にいたわけではありませんが、撮影が進むとともに、どんどん西部劇の様式に傾いていきました。戸口を通しての撮影といったジョン・フォード流の画があちこちに顔を出しています。

画像: 衣装担当イマー・ニー・ヴァルドウニグの素晴らしい仕事ぶり

──時代設定を1923年のアイルランド内戦時にされていますが、当時の様子がきちんと表現されていますね。

美術部が登場人物や街を素晴らしく生き生きとしてくれました。特に衣装担当のイマー・ニー・ヴァルドウニグの仕事ぶりは素晴らしかったですね。用意してくれた衣装を着た俳優が撮影現場に現れると、雰囲気ががらりと変わって、もう演技の必要はないほど。脚本が瞬時に視覚化されたのです。こんなことは初めてでした。もちろん俳優も演技をちゃんとしてくれましたけどね(笑)。

時代劇では、現代を感じさせるものを使わないということが不文律となっています。そうすることによって、設定が現代のものより古くなりません。とは言うものの、『ヒットマンズ・レクイエム』のような現代劇でも、iPhoneやパソコンのような現代を感じさせるものはできるだけ控えました。

──島の人たちは本当に近所づきあいをしているような感じです。

その感覚をとても重視していました。私は「世の中の誰もが自分の人生の主役」と考え、どの作品でも脇の人物の一人一人が個性を持つように描いています。それと同時に、2人の男の間で始まった戦争にどう反応し、誰がどっちの側につくかどうかも描かなくてはなりません。その辺りをリアルに描写をしたかったのです。

──タイトルにあるバンシー(精霊)はどこで現れるのですか。

アイルランドでは多くの人が、アイルランド神話の幽霊であるバンシーを知っています。普通は女性で、若い場合も、歳をとっている場合もあり、むせび声をあげて、村の人たちに不吉な死を告げます。バンシーについては、この説明でほぼ言い尽くしています。映画を観れば、もっと深く知ることができるかもしれません(笑)。

──コリン・ファレルとブレンダン・グリーソンは『ヒットマンズ・レクイエム』以来ですね。

『ヒットマンズ・レクイエム』の評判は落とさないように気を付けました。名コンビを復活させておきながら作品がコケて、名作の名前を汚すようなことはしたくないですからね。それだけが本当に心配でした。

画像: 『イニシェリン島の精霊』マーティン・マクドナー監督インタビュー

マーティン・マクドナー
Martin McDonagh

脚本家として名を成し、子供の頃に休暇を過ごしたアイルランドのゴールウェイ県での出来事を、6編の戯曲に起こし、2つの3部作に仕立てた。その作品は、ロンドンのウエストエンドとニューヨークのブロードウェイで上演され、マクドナーをアイルランドゆかりの脚本家として、トップクラスに押し上げた。

2004年、映画界に進出すると、初の短編映画『SIX SHOOTER』(原題)でアカデミー賞を受賞し、2008年には、コリン・ファレル、ブレンダン・グリーソン、レイフ・ファインズが出演する初の長編映画『ヒットマンズ・レクイエム』を監督。サンダンス映画祭のオープニング上映作品となり、アカデミー賞脚本賞の候補となった。

2012年の『セブン・サイコパス』では、再び、ファレルとタッグを組み、サム・ロックウェル、ウディ・ハレルソン、クリストファー・ウォーケンも出演者に名を連ねた。2017年の『スリー・ビルボード』ではフランシス・マクドーマンドを迎え、ロックウェルとハレルソンが脇を固めた。マクドーマンドとロックウェルは、その演技でアカデミー賞を受賞し、更に、映画自体は、作品賞、マクドナーへの脚本賞を含む、さらに5部門でノミネートされた。

映画『イニシェリン島の精霊』1月27日(金)全国ロードショー

画像: 『イニシェリン島の精霊』予告編│2023年1月27日(金)公開! www.youtube.com

『イニシェリン島の精霊』予告編│2023年1月27日(金)公開!

www.youtube.com

本土が内戦に揺れる1923年、アイルランドの孤島、イニシェリン島。島民全員が顔見知りのこの平和な小さい島で、気のいい男パードリックは長年友情を育んできたはずだった友人コルムに突然の絶縁を告げられる。急な出来事に動揺を隠せないパードリックだったが、理由はわからない。賢明な妹シボーンや風変わりな隣人ドミニクの力も借りて事態を好転させようとするが、ついにコルムから「これ以上自分に関わると自分の指を切り落とす」と恐ろしい宣言をされる。美しい海と空に囲まれた穏やかなこの島に、死を知らせると言い伝えられる“精霊”が降り立つ。その先には誰もが想像しえなかった衝撃的な結末が待っていた…。

『イニシェリン島の精霊』
1月27日(金)全国ロードショー
監督: 監督・脚本:マーティン・マクドナー「スリー・ビルボード」
出演: コリン・ファレル、ブレンダン・グリーソン、ケリー・コンドン、バリー・コーガンほか
2022年/イギリス・アメリカ・アイルランド/原題: The Banshees of Inisherin
配給: ウォルト・ディズニー・ジャパン
©2022 20th Century Studios. All Rights Reserved.
公式サイト:https://www.searchlightpictures.jp 

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