『ラ・ラ・ランド』でアカデミー監督賞を史上最年少で受賞した若き天才監督デイミアン・チャゼルがブラッド・ピット、マーゴット・ロビーを主演に迎えた映画『バビロン』が2月10日(金)に公開されます。ゴールデンエイジ(黄金時代)と呼ばれた1920年代、サイレント映画からトーキー映画へと移り変わるハリウッドを舞台に富と名声、野心に彩られた映画業界で夢を叶えようとする男女の運命を描きます。デイミアン・チャゼル監督の盟友ジャスティン・ハーウィッツが今回も楽曲を手掛け、第80回ゴールデングローブ賞で最優秀作曲賞を受賞し、第95回アカデミー賞作曲賞にノミネートされました。そのジャスティン・ハーウィッツのインタビューが届きましたので、ご紹介します。(構成:ほりきみき)

撮影前に音楽が入ったアニマティックスを制作

──デイミアンは『バビロン』の構想を15年前から持っていたそうですね。

2日ほど前に会見があり、デイミアンが「15年前からあった構想だ」と言うのを聞いて、初めて知りました。この作品について僕が彼から初めて聞いたのは2018年秋。そのときに「脚本を書き始めた」と言っていたので、てっきり、このプロジェクトはその頃から始まったのだと思っていました。

──あなたが初めにやったことは何でしたか。

脚本を受け取ったのは1年後の2019年秋でしたが、デイミアンはすでにしっかりと構想を練っていて、撮影を始める前から彼の頭の中に全部のショットが見えていました。そこで、一緒に脚本を読みながら相談し、音楽がどこにどんな形で出てくるのかを書き込んでいきました。パーティで演奏されている音楽が出てきますが、その音楽がそのままバックグラウンドになったりすることもあります。この映画には音楽をたっぷり入れました。

画像: ジャスティン・ハーウィッツ

ジャスティン・ハーウィッツ

──「音楽はポストプロダクションになってから」という映画監督も多いと思いますが、デイミアンはプリプロダクションの段階から考えているのですね。

デイミアンは『セッション』の時から音楽が入ったアニマティックス(動画による絵コンテ)まで作っているのです。彼がまず脚本を書き、僕は音楽に取り掛かる。次に彼はストーリーボードを描く。大抵の場合は彼自身が描いていますが、アーティストを雇うときもあるようです。そして、すべてのショットが描かれているストーリーボードと僕が作ったデモをFinal Cut Proに入れ、音楽とストーリーボードが一緒になったシークエンスを作る。時には音楽に合わせてショットを作ることもあります。撮影が始まる前にそこまでやっているのです。

──映画の舞台は1920年代ですが、その頃の音楽を聴きましたか。

意識してその時代の音楽は避けました。デイミアンが1920年代のジャズは嫌だと言ったのです。ほかの映画で使われることが多い音楽ですからね。それに、あの頃に演奏された音楽はごく一部しかレコーディングされていません。僕らはむしろレコーディングされていない、アンダーグラウンドの音楽に興味があったのです。

しかし、それらがどんな音楽だったのか、正確にはわかりません。バンドの名前などはわかっても、レコーディングはされていませんから。みんながドラッグをやっている派手なパーティではどんな音楽が演奏されていたのだろうかとイマジネーションを働かせました。

──最初のパーティのシーンで出てくるのは、強烈に叫ぶような音楽ですね。

作品の舞台に立っているミュージシャンたちは20年代を反映していますが、彼らが演奏している音楽はロックンロールに近い。モダンなダンス音楽みたいなものも入っています。20年代の音楽ではないかもしれませんが、僕たちは時代に正確であるかどうかよりも、みんながドラッグをやっているパーティのエネルギーを表現するために、ロックンロールにインスピレーションを受けた音楽にしたかったのです。ローリング・ストーンズやAC/DCのリフがたくさん出てくる曲を聴き、インスピレーションをくれる曲を集めたプレイリストを作りました。この時代の音楽にエレキギターを使われていないのはわかっていましたが、気分を高め、自分たちが何を目指しているのかを確認したかった。それで、この作品の音楽にリフがたくさん出てくるのです。つまり、楽器は20年代のものですが、曲の構築としてはほぼロックンロールです。

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