『ザ・スクエア 思いやりの聖域』でカンヌ国際映画祭パルム・ドールを受賞したスウェーデンのリューベン・オストルンド監督が、同映画祭で2度目の最高賞を受賞したブラック・ユーモアに溢れる風刺ドラマで、今回のアカデミー賞でも作品・監督・脚本賞の主要3部門で候補となっている。世界的なセレブたちを乗せた豪華客船が嵐に遭遇したあげく、無人島に漂着。そこでサバイバル生活を送ることになった乗客と乗務員の立場が逆転していく……。(文・ほりきみき/デジタル編集・スクリーン編集部)

出演は『キングスマン』のハリス・ディキンソン、新星ながら昨年急逝したチャールビ・ディーン、『スリー・ビルボード』のウディ・ハレルソン、本作でゴールデングローブ賞助演女優賞候補となったドリー・デ・レオンら。

あらすじ

画像: あらすじ

豪華客船クルーズの旅に招待されたモデル・カップルのカール(ディキンソン)とヤヤ(ディーン)。しかしヤヤは超売れっ子で、カールの何倍も稼いでいるという組み合わせだ。同乗した客たちは、有機肥料で大もうけしたロシアの新興財閥や英国の武器製造会社を営む老夫婦など桁外れのセレブたち。そして船長(ハレルソン)は部屋に閉じこもってアルコールに溺れており、スタッフは客たちの無理難題にてんてこ舞いだ。

だが旅の途中、船が嵐と遭遇し、ディナーの最中だった船内は地獄絵図になり、泥酔した船長は指揮を放棄して、通りがかりの海賊に手りゅう弾を投げられ、難破してしまう。カールとヤヤたちはなんとか無人島に漂着するが、そこで思わぬ状況が発生する……。

登場人物紹介

画像: 登場人物紹介

カール(ハリス・ディキンソン)
(画像右)

人気に陰りが見え始めたせいか自分より稼ぐ恋人ヤヤと衝突することもある男性モデル。

ヤヤ(チャールビ・ディーン)
(画像左)

売れっ子モデルにして人気インフルエンサー。豪華客船の旅に招待され、カールと参加。

画像: ヤヤ(チャールビ・ディーン) (画像左)

船長(ウディ・ハレルソン)

豪華客船の船長だが、アルコール依存症のため朝から晩まで部屋に閉じこもっている。

画像: 船長(ウディ・ハレルソン)

アビゲイル(ドリー・デ・レオン)
(画像中央)

客船のトイレ清掃員。無人島でサバイバル能力を発揮し漂流した乗客たちの頂点に立つ。

リューベン・オストルンド監督インタビュー

画像: リューベン・オストルンド監督インタビュー

『逆転のトライアングル』でアカデミー賞監督賞候補となったリューベン・オストルンド監督に、独特なユーモアに溢れた本作に隠された意図を聞いてみました。

──後半に豪華客船が難破し、数名が無人島に流れ着きます。どんな人物を何人残すか。全体におけるバランスにはどのような意図が込められているのでしょうか。

ファッション業界、豪華客船にはそもそも強いヒエラルキーと激しい格差がある。そのピラミッドを逆転させ、女性3人を上に置き、男性陣が自分たちのポジションを失うという新たなヒエラルキーが生まれたら、人間はどう行動するのか。そこでは生き延びるために“火が起こせる”といった原始的な生活能力が新しい価値基準になるのです。

カールを母性的な関係の中に置くという意図もあります。最初のパートでヤヤが「セレブ妻になる」と言っていましたが、新たな環境の中ではカールをセレブ妻に該当する存在にしました。

──本作を含めて過去3作品とも、主人公の男性はとっさに犯した過ちを後から指摘されても謝罪をしません。このことは何を意味しているのでしょうか。

3作品とも男性は期待された通りの人物であろうとして、罠にかかる。それは「自分ならどうするか」という僕自身のジレンマを浮き彫りにし、追い詰めるものでした。大勢の前で自分が辱められ、面目が立たなくなる“恥”という状況に僕はとても興味があるのです。

猫のエサを食べてしまった犬の動画をYouTubeで見つけたのですが、その犬の表情がとても恥じ入っているように見えました。カールを演じるハリスにそれを見せて、ボディーランゲージに反映させています。

『逆転のトライアングル』
2023年2月23日(木・祝) 公開
2022/スウェーデン、ドイツ、フランス、イギリス/2時間27分/ギャガ
監督:リューベン・オストルンド
出演:ハリス・ディキンソン、チャールビ・ディーン、ウディ・ハレルソン、ドリー・デ・レオン 他
Fredrik Wenzel © Plattform Produktion

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