1980年に映画第1作目が公開された「映画ドラえもん」シリーズ。42作目の『映画ドラえもん のび太と空の理想郷(ユートピア)』は空に浮かぶ、誰もが幸せに暮らせて何もかもが完璧な理想郷<パラダピア>を舞台に、ドラえもん達が空をかける大冒険へと飛び立ちます。本作で声優初挑戦したのがKing & Princeの永瀬廉。オリジナルキャラクターの“パーフェクトネコ型ロボット・ソーニャ”役を務めました。脚本は2023年放送のNHK大河ドラマ「どうする家康」で話題の古沢良太。「映画ドラえもん」の脚本を初めて手掛けます。TVアニメ「ドラえもん」の演出を数多く担当し、劇場版で初めて監督を務めた堂山卓見監督に作品への思いをうかがいました。(取材・文/ほりきみき)

音楽によって難しい内容も感覚的に子どもへ伝える

──新しいひみつ道具にワクワクする一方で、タケコプターやスモールライトといった定番の道具が今回も健在でした。物語を作っていく上で、定番ものも入れるという決まりがあるのでしょうか。

今回、脚本を作るにあたって、シナリオや設定が“ドラえもん”として大丈夫なのかを藤子・F・不二雄プロの方と確認しながら進めていったのですが、「これは絶対に出してください」といったことは何も言われませんでした。ただ、僕も古沢さんも今までのドラえもんが大好きで、定番も入れたくなってしまった。タケコプターを使ったのは、その気持ちが映画からあふれた結果です。

画像: 音楽によって難しい内容も感覚的に子どもへ伝える

──ドラえもんがポケットの中身を整理して、古くなって使えないものをリサイクルに出すために“四次元ごみ袋”に入れているのを見て、最近の生活様式が取り入れられているのを感じました。

「ドラえもん」はマンガのころからSFではあるとともに日常ギャグマンガでもありました。ドラえもんは夢のような道具をいっぱい出してくれますが、レンタル品や中古品が多く、意外に世知辛い設定が原作の中にも出てきます。

のび太くんたちは昭和から平成、令和と生きてきました。少し前ならいらないものはぽいぽい捨てて終わりだったかもしれませんが、今はリユースやリサイクルを考える。そういう生きている時代の生活感を取り入れたい。それは未来に繋がっていくはず。未来にも不要品の処分の仕方にルールがあるだろうと考えて、“四次元ごみ袋”を登場させることにしました。

──タイムツェッペリンを届けてもらったときに支払いの話が出てきましたが、確かに世知辛さを感じますね。

先程もお話したようにタイムツェッペリンは趣味で作られたものですから、意外に高性能。ドラえもんのような庶民が買うとしたら、持ち主が「もう使わないから」と中古品で流れてきたものではないか。大人が見て、クスッと笑ってしまうようなところがドラえもんにはある。子どもにとっては大きくなったらわかる面白みも仕込んでいます。

──「映画ドラえもん」は子どもも大人も満足できる内容が求められ、制作側にとってはとてもハードルの高い作品ですね。小さなお子さんにもわかるようにするために何か他の作品とは違うことをされているのでしょうか。

普段、テレビで見ているドラえもんたちが出てくるので、細かい状況は理解できなくても、「のび太くんは悩んでいるのかな」とか、「ドラえもんが悲しそうだな」といったことはわかるのではないかと思います。その上で今回、助けてもらったと思うのが音楽、BGMですね。

映画ドラえもんは音楽に力を入れていて、ここ5作品は服部隆之先生が作ってくださっています。主題歌も毎回、素晴らしいアーティストさんが参加してくれ、今回はNiziUさんが主題歌を歌っています。「ここは楽しいシーンですよ」とか、「この人たちはちょっと怖いかもしれませんよ」といったことを音楽でさり気なく伝えて、こちらに意識を誘う。最後はNiziUさんの主題歌できれいに余韻が残って終わるという風にしました。ちょっと難しい設定部分も音楽によって感覚的にお子さんにも伝わる。それがどういうことか、今は具体的にわからなくても、大人になって見返したときに、こういうことだったのかと深いところまで理解ができるのではないかと思います。

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