ソーニャやのび太くんを中心に心の機微を深掘り
──監督がテレビシリーズに関わられたのは2017~2020年とのことですが、映画の監督が決まったら、いったん、テレビシリーズの現場からは離れるものなのでしょうか。
「映画ドラえもん」は基本的には年1本作るもの。その期間に関しては完全に映画に専念する。歴代の監督の方々もそうされていました。
というのも、作業量がとてもたくさんあるのです。特に今回はオリジナルの話ですから、すべてのデザインを決めていかなくてはいけません。キャラクターの服もそうですし、背景美術もそう。例えば、パラダピアがどういう形をしていて、どういう色で、そこにはどういう音が流れているのか。0から決めていくのです。テレビシリーズは基本ができ上っているので、今までやったことがない新しい話であっても、過去の話の一部分を活用することができますが、映画ではそういうことができません。しかも新しいものでありつつ、それがドラえもんの世界観から外れていくものであってはいけない。あくまでもドラえもんの世界観の中で新しいものを作る。すごく忙しかったです。
映画では毎回、のび太の町から冒険に出発します。監督によっては、のび太くんの家が映画仕様になるというか、リアル寄りの描き方をされることもあります。僕はテレビ出身ということもあるのですが、テレビシリーズとの繋がりというか、映画を見てからテレビを見る子もいるので、日常パートに共通点を入れておきたい。若干映画用にアレンジをしたところもありましたが、色味などのベースはテレビシリーズののび太くんの家にしてもらいました。いつもご覧いただている方にはよくわかると思います。
──映画だからできたことはありましたか。
「映画ドラえもん」はアクションシーンなどが盛りだくさんになることが多く、もちろんそれも入れ込んではいますが、今回はドラマの部分で映画としての尺を使い、ソーニャやのび太くんを中心に心の機微を深掘りできました。パーフェクトでなくてもいいんだというメッセージが今回の映画の中心にあり、みなさんの心に残したいと古沢さんの初期のプロットを見たときから思っていたのです。心理描写や表情を贅沢なくらい丁寧に追い掛けることができました。喋っている人ではない人の表情、カメラの端っこにいる人の表情もこだわって作っています。テレビシリーズの1時間のスペシャルでも難しく、ましてや通常の30分のアニメではそこまで描き切れません。最初はのび太くんを追っかけていかれるかと思いますが、複数回ご覧いただいて、「このときにソーニャはこんな顔をしていたんだ」というところまで見ていただけるとうれしいです。
PROFILE
堂山卓見
1980年山口県生まれ
2017年「げんばのじょう -玄蕃之丞-」(あにめたまご2017)/監督
2017年~TVアニメ「ドラえもん」/絵コンテ・演出
2019年TVアニメ「ドラえもん」誕生日スペシャル「未来の迷宮 おかし城」/絵コンテ・演出
作品情報
<STORY>
もしもどこかに何でも叶う夢のような場所が存在していたら―??誰もがユメミル、幸せの楽園に隠された秘密とは…!?空に謎の三日月型の島を見つけたのび太は「あれこそが僕が探していたユートピアだ!」と言い張り、ドラえもんたちと一緒にひみつ道具の飛行船『タイムツェッペリン』で、その島を探しに出かけることに!色々な時代・場所を探してやっと見つけたその正体は、誰もがパーフェクトになれる夢のような楽園<パラダピア>だった!
そしてそこで出会ったのは、何もかも完璧なパーフェクトネコ型ロボット・ソーニャ。すっかり仲良くなったドラえもんたちとソーニャだが、どうやらこの楽園には大きな秘密が隠されているようで…。はたしてのび太たちは、その楽園の謎を解き明かすことができるのか!?空に浮かぶ理想郷(ユートピア)での大冒険が始まる――!!
『映画ドラえもん のび太と空の理想郷(ユートピア)』
2023年3月3日(金) 全国東宝系にてロードショー
原作:藤子・F・不二雄
監督:堂山卓見
脚本:古沢良太
声の出演:
ドラえもん:水田わさび
のび太:大原めぐみ
しずか:かかずゆみ
ジャイアン:木村昴
スネ夫:関智一
マリンバ:井上麻里奈
ハンナ:水瀬いのり
未来デパートの配達員:山里亮太(南海キャンディーズ)
パラダピアの先生:藤本美貴
ソーニャ:永瀬廉(King & Prince)
主題歌:NiziU「Paradise」(ソニー・ミュージックレーベルズ)
配給:東宝
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