真面目一辺倒で融通の利かない初老の男性オットーが向かいの家に越してきた子育て世代家族に翻弄されつつ、生きる喜びを見出していく。映画『オットーという男』は「America’s Dad(アメリカのパパ)」と称され、世界中で愛されているトム・ハンクスがパブリックイメージとは正反対のキャラクターを演じて話題になっています。しかも主題歌「Til You’re Home」をトムの妻であるリタ・ウィルソンが手掛け、オットーの若い頃を実の息子であるトルーマン・ハンクスが演じているのです。メガホンを取ったマーク・フォースター監督に作品への思いやキャストについての話をうかがいました。(取材・文/ほりきみき)

自分なら光と闇のトーンをバランスよく撮れると思った

──原作はスウェーデンの作家フレドリック・バックマンによる「En man som heter Ove(邦題:幸せなひとりぼっち)」で、42週連続でニューヨークタイムズのベストセラーリスト入りを果たした後、スウェーデンで映画化されて一大センセーションを巻き起こしました。さまざまなテーマを含んだ作品ですが、この小説のどこに惹かれましたか。

僕は楽観主義的なところがあって、人間というものも信じていますし、人間をテーマにした作品に興味があります。この作品はオットーの周りのキャラクターたちがそれぞれ違うバックグラウンドを持っているものの、彼らが1つになることで、オットーが生きる理由を改めて見出すことができるところがいいですね。

画像: 自分なら光と闇のトーンをバランスよく撮れると思った

──監督は幅広いジャンルの作品を作っていらっしゃいましたが、今回、ご自身のどんな部分がこの作品で発揮できると思いましたか。

私は原作を読んでから、スウェーデンで映画化されたものを見ました。その後、アメリカでの映画化の権利を知人のフレドリク・ヴィークストレム・ニカストロが持っていると知って連絡をしてみたところ、トム・ハンクスも興味を持っていることがわかり、みんなで会って、そこから企画が動き始めたのです。

トム・ハンクスは最近、シリアスなドラマが続いていますが、80年代には『ビッグ』や『スプラッシュ』といったコメディ作品で注目されました。この作品ならトムのユーモアのある部分も出せるし、ドラマの部分も描ける。映画作品として光と闇の両方が出せ、自分ならその両方のトーンをバランスよく撮れるのではないかと思いました。

──光と闇を絶妙なバランスで描く際に意識したことがありましたか。

光と影だけではなく、現在と過去も出てきます。そこをスムーズに行き来することを心掛けました。さらにコメディとドラマのバランスも大事。編集で試行錯誤を繰り返したのですが、そのときに音楽の力も借りました。大変な作業ではありましたが、やっていて楽しかったですね。いい塩梅でできたと思っているので、観客の方にもそう感じてもらえればと思います。

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