自分なら光と闇のトーンをバランスよく撮れると思った
──原作はスウェーデンの作家フレドリック・バックマンによる「En man som heter Ove(邦題:幸せなひとりぼっち)」で、42週連続でニューヨークタイムズのベストセラーリスト入りを果たした後、スウェーデンで映画化されて一大センセーションを巻き起こしました。さまざまなテーマを含んだ作品ですが、この小説のどこに惹かれましたか。
僕は楽観主義的なところがあって、人間というものも信じていますし、人間をテーマにした作品に興味があります。この作品はオットーの周りのキャラクターたちがそれぞれ違うバックグラウンドを持っているものの、彼らが1つになることで、オットーが生きる理由を改めて見出すことができるところがいいですね。
──監督は幅広いジャンルの作品を作っていらっしゃいましたが、今回、ご自身のどんな部分がこの作品で発揮できると思いましたか。
私は原作を読んでから、スウェーデンで映画化されたものを見ました。その後、アメリカでの映画化の権利を知人のフレドリク・ヴィークストレム・ニカストロが持っていると知って連絡をしてみたところ、トム・ハンクスも興味を持っていることがわかり、みんなで会って、そこから企画が動き始めたのです。
トム・ハンクスは最近、シリアスなドラマが続いていますが、80年代には『ビッグ』や『スプラッシュ』といったコメディ作品で注目されました。この作品ならトムのユーモアのある部分も出せるし、ドラマの部分も描ける。映画作品として光と闇の両方が出せ、自分ならその両方のトーンをバランスよく撮れるのではないかと思いました。
──光と闇を絶妙なバランスで描く際に意識したことがありましたか。
光と影だけではなく、現在と過去も出てきます。そこをスムーズに行き来することを心掛けました。さらにコメディとドラマのバランスも大事。編集で試行錯誤を繰り返したのですが、そのときに音楽の力も借りました。大変な作業ではありましたが、やっていて楽しかったですね。いい塩梅でできたと思っているので、観客の方にもそう感じてもらえればと思います。