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17歳から18歳という子どもと大人のはざまに差し掛かった3人の少女が〈こうあるべき自分〉を思い描き、つまずき、ぶつかり、失敗しながらも誰かと寄り添い、自由を獲得する方法を学んでいく。映画『ガール・ピクチャー』は若い世代の感覚を反映させ、ヘテロセクシュアル(異性愛)やシスジェンダー(割り当てられた性別と性自認が一致している人)を前提とせず、それぞれに異なる恋愛指向があることを当たり前として物語が進む時代を反映した青春映画です。脚本開発にも関わったアッリ・ハーパサロ監督に作品の核となる思いについて語っていただきました。(取材・文/ほりきみき)

時には母親に抱きしめてもらいたい瞬間もある

──ミンミは母親との関係も描かれていました。監督は彼女たちの母親世代かと思いますが、演出で意識したことはありましたか。

母親と娘、両方の役者と話をして、脚本の書き直しをしました。最初の脚本では母親をもう少し冷たい感じで描いていたのですが、役者から「それは違うと思う」と言われたのです。そこで、母親はミンミに対して冷たくあしらっているわけではなく、精一杯やっているけれど、人間だからどうしても至らないところが出てくるという形で描くことにしました。

ただ、2人が絡むシーンは2回だけ。ミンミが母親と電話で話すシーンは後から付け加えましたから。2人の関係性は2回でしっかり伝えなくてはなりません。そのためには、なぜ母親がミンミに対して、これだけ距離を置いているのかという裏付けとなるバックストーリーが必要です。そこで、いろいろ考えました。ミンミは自立心が旺盛で、お母さんには「私、1人で大丈夫だから」と伝えているはず。だから母親としてはミンミの自立心を応援するためにも「自分が出しゃばってはいけない」と考えた。とはいえ10代はまだまだ子ども。時には母親に抱きしめてもらいたい瞬間もある。ミンミの母親にはそこが見えていなかった。10代の娘を持つ難しさを丁寧に描いたつもりです。

画像: 時には母親に抱きしめてもらいたい瞬間もある

──ロンコとミンミの会話の中に映画を見る話が出てきますが、フィンランドの映画事情について教えてください。

コロナ禍で映画館に規制が設けられて客足が減り、コロナが落ち着いた今でもコロナ禍前の状況には戻っていません。その間にフィンランドで撮られた作品もありましたが、まだ閉鎖されている映画館もあり、多くの人に見てもらえる状況ではない状況です。

若い世代は配信で映画を楽しむ人も増えてきていますが、大作や有名な作品は劇場に足を運ぶ人が多いですね。『トップガン マーヴェリック』『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』といった作品は国内でもしっかりヒットしていました。

それでも映画好きでアート系作品の熱心なファンはフィンランドにも少なからずいます。フィンランドの映画協会がそういった作品の配給支援に力を入れ、都会だけでなく、地方でも見られるようになってきました。

画像: 【インタビュー】映画『ガール・ピクチャー』思春期独特の気持ちの揺れを丁寧に描いたとアッリ・ハーパサロ監督が語る

PROFILE
アッリ・ハーパサロ/監督

1977年生まれ。フィンランド出身の監督・作家。

二ューヨーク大学ティッシュ芸術学校で芸術修士号、アールト大学の映画学校でテレビと背景美術の学士号を取得し、2016年にデビュー作『Love and Fury』では、自分自身の主張を見いだしていく女性作家の姿を描いた。2019年には、7人の脚本家と監督が製作した、ジェンダーバイアスと構造的な権力の誤用について描かれた『Force of Habit』に参加。この作品は世界で高く評価され、ユッシ賞(フィンランド・アカデミー映画賞)の作品賞、監督賞、脚本賞にノミネート。さらに 2020 年には北欧理事会映画賞を受賞した。3作目の長編映画である『ガール・ピクチャー』でも、強い女性を主人公とした作品を作り続けることに力を注いでいる。

『ガール・ピクチャー』4月7日(金)より新宿シネマカリテ、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国順次ロードショー

画像: 【予告編】『ガール・ピクチャー』 www.youtube.com

【予告編】『ガール・ピクチャー』

www.youtube.com

<STORY>

10 代の金曜日は、いつだって何かが起きる予感でいっぱいだ。

最初の金曜日。

クールでシニカルなミンミと、素直でキュートなロンコ。タイプは違ってもお互いを支え合う親友の二人は、放課後のショッピングモールでスムージースタンドのアルバイト中も、恋愛やセックスの不安や期待にまつわるおしゃべりを楽しんでいる。男の人と一緒にいても何も感じない自分はみんなと違うのではと悩むロンコは、理想の相手との出会いを求めて果敢にパーティーへと繰り出す。一方、ロンコの付き添いでパーティーにやってきたミンミは、ヨーロッパ選手権の選考が懸かった試合を前に、プレッシャーに押しつぶされそうなフィギュアスケーターのエマと急接近する。

2度目の金曜日。

恋人同士となり、幸せな日々を過ごすミンミとエマ。ミンミと過ごす居心地の良さと、スランプから逃げたい気持ちから、エマは 14 年間で初めて練習に遅刻してしまう。離れて暮らす母サンナにエマを紹介しようと、義弟リオネルの誕生日を祝いに向かうミンミだが、約束をすっかり忘れていた母から待ちぼうけを食らい深く傷つく。その頃ロンコは、イケメンで女好きのシピ主催のパーティーで彼とベッドインに成功。ミンミのアドバイスに従い、自らの要求を相手に伝えてみるも、「マニュアルに従わされて気持ちが萎えた」と言われてしまう。

3度目の金曜日。

試合を翌日に控えてもトリプル・ルッツに成功できないエマ。ミンミを練習先に連れてきたことや、集中していないことをコーチにとがめられ、「もうやめる」と宣言。スケート場を飛び出し、ミンミとの恋愛に逃避する。母親の育児放棄により長期的な関係をうまく築くことができないミンミは、エマの愛情から逃げ出したくなり、クラブで出会った男性を口説き始める。そしてロンコは、2週間前にデートに誘われた男の子を食事に誘い、セックスにもちこむが、呑みすぎたせいで彼の胸めがけて吐いてしまい、またしても失敗に終わる。

翌朝。

バイト先でも携帯でエマの試合を眺め、未練たらたらなミンミに本音をぶつけるロンコ。痛いところをつかれて片付けていた食器をぶちまけるミンミは、警備室に呼ばれることに。母親を呼び出した彼女は、娘としての複雑な心境を打ち明ける。そして、エマは笑顔でフリーの演目を踊り出す。

<STAFF&CAST>

監督:アッリ・ハーパサロ  
脚本:イロナ・アハティ、ダニエラ・ハクリネン
出演:アーム・ミロノフ、エレオノーラ・カウハネン、リンネア・レイノ
2022年/フィンランド/100分/カラー/スタンダード/5.1ch/
原題:Tytöt tytot tytöt/PG12/日本語字幕:松永昌子

配給:アンプラグド
© 2022 Citizen Jane Productions, all rights reserved

公式サイト:https://unpfilm.com/girlpicture/

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