父親が犯した咎を背負い、ひっそりと生きてきた主人公が幼馴染みから生きる意味と希望を与えられ、自分の人生を取り戻していくが…。映画『ヴィレッジ』はある村を舞台に、社会構造の歪みとその中でもがく若者の姿を浮き彫りにしたサスペンス・エンタテインメントです。主人公の片山優を演じるのは横浜流星。ドラマ版「新聞記者」をきっかけにスターサンズの河村光庸が期待を込めて抜擢しました。脚本も担当した藤井道人監督とは6度目のタッグとなります。公開を前に藤井監督にインタビューを敢行。作品に対する想い、キャストへの演出、年齢こそ離れているものの盟友とも言える河村光庸プロデューサーについて、語っていただきました。(取材・文/ほりきみき)

河村光庸プロデューサーは父親であり、友であり、師匠ともいえる存在

──優と母親、修作・光吉兄弟と母親、透と修作。どの親子も問題を抱えています。監督はご自身のこれまでに感じたことなどを反映させているのでしょうか。

僕の父親は中高大とエリートで進み、僕にも同じ道を歩ませようとしましたが、僕は父の期待に応えきれなかったと感じることが多々ありました。ただ、期待通りに育っていたら映画監督の道に進んでいなかったと思いますし、父は映画監督としての僕をいちばん応援してくれているファンの1人ですから、父との間に葛藤はありません。

また、僕自身もすでに親になっていますが、父親らしくありません。父親として尊敬されているかどうかはいささか疑問なところはありますが(笑)。

僕はこれまでに『ヤクザと家族 The Family』といった疑似家族の映画を撮ったことがあります。家族って繋がっていることですよね。その意味での家族においては血より濃いものがある。僕と河村さんの関係のように。この作品ではそういった人間関係を相対的に描きたかったのです。

──本作は河村光庸プロデューサーとの最後の作品となってしまいましたが、監督にとって河村プロデューサーはどのような存在だったのでしょうか。

映画の世界における父親であり、友であり、師匠です。河村さんの晩節、最後の4年間はずっと一緒にいました。彼と映画を創っているときがいちばん楽しかったですね。

──河村さんと組んだことでご自身に変化はありましたか。

河村さんはビジネスマンとしての側面も持ち、映画を企画する責任、宣伝する責任、届ける責任に対する執着はすごいものがありました。

河村さんと組むまでは、“監督はいい作品さえ撮ればいい”と思っていました。しかし今は企画から宣伝まで誇りをもって取り組まなくてはいけないと思っていますし、自分もそういうプロデューサーにならなければと思います。本当に幅広く映画に取り組む姿勢を学びました。

河村さんが生きているうちに一緒に創った作品はこれが最後ですが、企画はまだまだたくさん残っています。ですから、残された企画は河村さんの精神を引き継いで、やっていくつもりです。

──今後についてはどうお考えでしょうか。

20代の頃から海外で作品を撮ることを掲げてきました。そこにもう少しフォーカスしていきたいと思っています。海外ロケでも海外が舞台でも構わないのですが、海外に身を置いて、自分にとっての第二章としてがんばってみたいです。

──最後にひとことお願いいたします。

能という演目は見る人によってたくさんの解釈ができるように、この作品も立場や年齢、性別、住んでいる場所など、いろんなことで受け取り方が変わります。何かを押し付けるのではなく、共有したい、映画を通じて対話をしたいという思いで作りました。この作品はご覧いただいて、それぞれが思ったことが答えです。ぜひ楽しんでご覧いただければと思います。

PROFILE
監督・脚本:藤井道人

1986年8月14日生まれ、東京都出身。日本大学芸術学部映画学科卒業。大学卒業後、2010年に映像集団「BABEL LABEL」を設立。伊坂幸太郎原作『オー!ファーザー』(14)でデビュー。以降『青の帰り道』(18)、『デイアンドナイト』(19)など精力的に作品を発表。『新聞記者』(19)は日本アカデミー賞で最優秀賞3部門含む、6部門受賞をはじめ、映画賞を多数受賞。以降、『宇宙でいちばんあかるい屋根』(20)、『ヤクザと家族 The Family』(21)、「アバランチ」(21/CX)、「新聞記者」(22/Netflix)、『余命10年』(22)と話題作が次々に公開。待機作に『最後まで行く』(5月19日公開)がある。

『ヴィレッジ』4月21日(金)全国公開

画像: 映画『ヴィレッジ』本予告 | 4月21日(金)公開 www.youtube.com

映画『ヴィレッジ』本予告 | 4月21日(金)公開

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<STORY>
美しいかやぶき屋根が並ぶ山あいの霞門村。のどかな景観におよそ似つかわしくないゴミ処理施設がそびえる山々の間からのぞく。そこで働く作業員の優(横浜流星)は、職場と家を往復するだけの毎日で、暇つぶしといえばスマホゲームぐらい。仕事中は村長の息子である透(一ノ瀬ワタル)にいびられ、わずかな給料も母親の君枝(西田尚美)がギャンブルで作った借金の返済に消えていく。そんな母子に村人たちが向ける目は冷たかった。かつて父親がこの村で起こした事件の汚名を背負い、その罪を肩代わりするようにして生きてきた優には、人生の選択肢などなかった。
ある日、7年前に村を出て行った幼馴染の美咲(黒木華)が帰ってきた。それをきっかけに物語は大きく動き出す。

監督・脚本: 藤井道人
音楽:岩代太郎
企画・製作・エグゼクティブプロデューサー:河村光庸
出演: 横浜流星 黒木華
一ノ瀬ワタル 奥平大兼 作間龍斗/淵上泰史 戸田昌宏 矢島健一/杉本哲太 西田尚美 木野花/中村獅童 古田新太
配給:KADOKAWA/スターサンズ
© 2023「ヴィレッジ」製作委員会
公式サイト:https://village-movie.jp/

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