落ちぶれた元ポルノ・スターが夢見るサクセス・ストーリーとは?
『レッド・ロケット』
『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』(2017)で賞賛されたショーン・ベイカー監督の新作で、利己的でナルシストの落ちぶれた元ポルノ映画界のスターが、故郷のテキサス州にもどって再起を狙う姿をコミカルかつ鮮やかに描いたヒューマンドラマ。
主演は主人公マイキーとリンクするかのように、過去に出演したポルノ映像が流出したことで一時表舞台から姿を消していたサイモン・レックス。他に舞台女優のブリー・エルロッド、新人スザンナ・サンや、監督がスカウトした演技未経験の人物たちが共演する。撮影は『イット・カムズ・アット・ナイト』(2017)などトレイ・エドワード・シュルツ監督のA24作品で知られるドリュー・ダニエルズで、16ミリフィルムを使用して撮影している。
あらすじ
故郷のテキサスシティに17年ぶりに戻ってきたマイキー(レックス)は、ポルノ界のアカデミー賞で5回候補になるも、いまや落ちぶれた軽薄で利己的な男。別居中の妻レクシー(エルロッド)とその母が住む家に何とか転がり込むが仕事が見つからず、近所でマリファナの元締めをしているレオンドリアに頼み込んで大麻のディーラーを始める。
ある日レクシーたちと立ち寄ったドーナツショップで販売員をしていた17歳の少女ストロベリー(サン)と出会ったマイキーは、奔放な彼女がポルノ業界で才能を発揮できると確信し、彼女とハリウッドに戻って成功する夢を見始めるが……。
登場人物
マイキー(サイモン・レックス)
「世間に裏切られて」テキサスに帰ってきたという元売れっ子ポルノ男優。ご都合主義でうすっぺらい人物だが意外と愛されキャラ?
レクシー(ブリー・エルロッド)
マイキーの妻で、かつては彼と一緒にポルノ作品に出演していた。現在はドラッグ中毒となり母と同居中で、体を売って稼いでいる。
ストロベリー(スザンナ・サン)
ドーナツ店でバイト中のもうすぐ18歳になる少女。テキサスシティには退屈していて、ハリウッドに憧れマイキーと付き合い出す。
監督は『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』のショーン・ベイカー!
本作で監督、脚本、編集を務めるのは前作『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』(2017)でA24と組んだショーン・ベイカー。2000年に長編映画デビューして以降、常に社会の中で見落とされがちな人物に注目してきたベイカーは、2012年にも『チワワは見ていた ポルノ女優と未亡人の秘密』(劇場未公開)で老女にお金を返そうと苦労するポルノ女優を描いていたが、その時のリサーチで業界の男優たちの生きざまに興味を持ったそう。
全編をiPhoneで撮影した『タンジェリン』(2015)ではトランスジェンダーの売春婦たち、『フロリダ・プロジェクト…』でもシングルマザーの売春婦を描いたベイカーは、そうした人々の人間的な一面を道徳的な判断をせず見つめる作風で、今後も秀作を連発しそうだ。
『レッド・ロケット』
2023年4月21日(金)公開
アメリカ/2021/2時間10分/配給:トランスフォーマー
監督:ショーン・ベイカー
出演:サイモン・レックス、ブリー・エルロッド、スザンナ・サン
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