事故や災害が起こるとオペ室を搭載した大型車両=ERカーで現場に駆け付け、自らの危険を顧みず患者を救おうと救命救急のプロフェッショナルチームが奮闘する。2021年7月から放送されたドラマ「TOKYO MER~走る緊急救命室~」は新しいタイプの医療ドラマとして注目を集めました。
劇場版『TOKYO MER~走る緊急救命室~』はドラマの2年後を描いた作品です。鈴木亮平を始めとするレギュラーメンバーに加えて、杏、ジェシー(SixTONES)といったキャストが加わり、横浜ランドマークタワーで起きた火災にさまざまな立場で立ち向かいます。ドラマから引き続き演出を担当した松木彩監督に作品への思い、映画だからこそできたことなどをうかがいました。(取材・文/ほりきみき)

キャラクターの関係性の変化で新たな距離感を描く

──本作は連続ドラマの映画化です。「コロナ禍に患者のために危険を顧みずに未知のウィルスに挑む医療従事者の方々へのリスペクトとエールを込めたドラマを作ることで感謝の意を表したい」という思いから、プロデューサーが連続ドラマの企画を立ち上げたとのことですが、企画を聞いてどう思われましたか。

コロナ禍でしたので、病院が舞台の作品は撮影が難しく、その時期にあえて医療モノをするのはロケとかどうするんだろうと思いながら、企画書を読みました。すると今だからこそ、これを作るべきなんだという想いに強く共感しましたし、そもそも私のイメージとは大分違っていました。通常の医療モノに出てくる病院の内部シーンは本当に少なくて、むしろ事故現場での撮影が中心。新しいタイプの医療モノで、挑む価値があると思いました。

画像: 松木彩監督

松木彩監督

──映画化の企画はドラマが終わる頃には決まっていたと聞きました。監督は映画が初めてでいらっしゃいますが、映画化の話を聞いてどう思いましたか。

私はチーフディレクターとしてドラマを演出するのは、この作品が初めてでした。映画化の話を聞いたときはドラマの撮影が佳境に入っていて、そちらのことで精一杯。映画化はうれしいけれど、まずはドラマをきちんと完結させなくてはという気持ちが勝っていました。ドラマの最終回を放送の2日前まで撮影していたほど大変な現場だったので・・・。扉が閉まるカットで終わるのですが、そこの編集が終わってやっと映画化の実感がわいてきました。

脚本に関しては私がドラマに集中していたので、その裏で準備を進めていただいていて、ドラマの編集が終わって納品したところで、映画のプロットを読みました。その段階で、もう一つのMERが出てくることは決まっていたと思います。

画像: キャラクターの関係性の変化で新たな距離感を描く

──撮影はすぐに始まったのでしょうか。

2021年9月にドラマの撮影を終え、クランクインしたのが2022年4月。半年ほど間が空きましたが、久しぶり感はなかったです。ドラマでは脚本の読み合わせをしたりしましたが、今回は医療リハーサルをしたくらい。それでも「じゃあ、いきますか」みたいな感じで、驚くほどドラマのときと同じように始まりました。改めてドラマの撮影が濃かったことを実感しました。

──レギュラーメンバー全員が登場し、それぞれに見せ場がありますね。

私も脚本を読んで興奮しました。一人一人が本当にヒーローで、撮るのが楽しみだと思いました。黒岩さんはドラマの現場で生まれたものも大切にしてくださるので、脚本に負けないよう頑張ろうと気合いを入れて撮らせていただきました。

──ドラマから2年後の設定ですが、キャラクターの変化などについて、キャストとはどのような話をされたのでしょうか。

喜多見は確固たる信念があるキャラクターですし、他のキャラクターもキャラそのものは変化していません。ただ、キャラクターの関係性が変わっているところがあって、その距離感やバランスはキャストと相談しながら丁寧につくっていきました。一番大きいところが高輪。高輪は喜多見の元妻でしたが、映画では2人が再婚しています。高輪は妊娠がきっかけで夏梅と仲良くなっていて、喜多見と夏梅には仕事以外に妻の友人という新しい関係性もできました。

比奈はドラマでも随分成長を見せましたが、映画では後輩ができました。比奈を演じた中条あやみさんとは、比奈が医者としてどのくらい成長したのかを相談しながら、先輩・弦巻比奈の姿を一緒に作っていきました。

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