劇場版『TOKYO MER~走る緊急救命室~』はドラマの2年後を描いた作品です。鈴木亮平を始めとするレギュラーメンバーに加えて、杏、ジェシー(SixTONES)といったキャストが加わり、横浜ランドマークタワーで起きた火災にさまざまな立場で立ち向かいます。ドラマから引き続き演出を担当した松木彩監督に作品への思い、映画だからこそできたことなどをうかがいました。(取材・文/ほりきみき)
喜多見と対立するが悪役ではないYOKOHAMA MERチーフドクターの鴨居友
──映画から登場したYOKOHAMA MERチーフドクターの鴨居友を杏さんが演じています。
私のイメージでは鴨居も喜多見と同じくらい優秀な医師ですが、医師として重ねてきた経験が違います。喜多見は医療機器が揃っておらず、医師がひとりで何でもやらなきゃいけない環境にいましたが、鴨居は最先端の医療現場で学んできました。そのため持っている信念が異なるので初めは喜多見と対立しますが、決して嫌がらせをしたりするわけではありません。鴨居を悪役にはしたくなかったし、見ている人に「鴨居が言っていることも正義」と思ってもらいたいと杏さんと話しました。そんな鴨居を杏さんが説得力を持って演じてくれました。
──鴨居の手術シーン、いかにもできる医師という感じでカッコいいですね。
TOKYO MERのメンバーはドラマで培ってきた経験がありますが、杏さんはオペの練習をする時間がほとんどない状況でした。しかもDSA(Digital subtraction angiography血管造影撮影法)という新しい機械を使ったオペをしますが、撮影中目の前のモニターに本物の体内の映像はもちろん出せないので、ここでこういう画面が出ています、という説明と目安の映像だけで挑んでいただきました。それでも目線の動きがとてもリアルで、NGもまったく出されず・・・。すごく勉強してくださったのだと感激しました。実際に現場でも監修の医師の方とたくさんお話されていました。
──鴨居はクールである一方で、純な部分もあります。そんなところを杏さんが見事に体現されていました。
そうなんです。内面はすごくピュアでかわいい。空港で想いがかなわなかった時の表情がとても素敵で。あれがあったからアメリカでわき目もふらずに邁進したのだろうという物語が自然と感じられるし、現在の揺るぎない自信に説得力がある。喜多見の手腕を次第に認めていき、自分もそちらに行きたくなっていく辺りもとても丁寧に演じてくださいました。鴨居はピアスをつけていますが、それは杏さんのアイデアです。この作品のために穴を空けてくれました。
──ドラマではできなかったこんなことを映画だからやってみたということはありましたか。
撮影自体はドラマと同じように取り組みましたが、音はドラマではできなかったことをいろいろやらせていただきました。ドラマのときは、見てくださる方も生活音がある中でご覧いただくので、小さな効果音は余程立つもの以外は意識されにくかったですし、とにかくセリフと音楽を前面に出してきましたが、映画は素晴らしい音響設備で集中して見ていただけるということで、炎の音、水音、風音、人の足音や小さな息遣いなどをより立体的に表現できるし、ドラマではできなかった空間の演出がたくさんできて、贅沢だなと思いました。
劇伴を盛大にかけるところは思いっきりぶった切ってかけましたし、全くの無音の瞬間を作るというのも、この作品でずっとやってみたかったことでした。音の表現が広がったことで、ドラマのときから大事にしていた臨場感をもっと強く感じてもらえるようになったのではないかと思います。
──これからご覧になる方に見どころなど、ひとことお願いします。
ドラマから応援してくださっていた方だけでなく、今回初めてご覧になる方にも楽しんでいただけるよう、幅広い世代に向けて作りました。キャラクターと一緒に現場を駆け回るつもりでご覧いただければ思います。
<PROFILE>
松木彩監督
1987年生まれ。宮城県仙台市出身。2011年TBSテレビ入社。第105回ザテレビジョンドラマアカデミー賞監督賞(2020年「半沢直樹」、福澤克雄、田中健太と共同)を受賞。主な作品は「半沢直樹」「テセウスの船」「下町ロケット」。
劇場版『TOKYO MER~走る緊急救命室~』2023年4月28日(金)全国公開
<STORY>
【TOKYOMER】――オペ室を搭載した大型車両=ERカーで事故や災害現場に駆け付け、自らの危険を顧みず患者のために戦う、都知事直轄の救命医療チームである。彼らの使命はただ一つ…『死者を一人も出さないこと』。
横浜・ランドマークタワーで爆発事故が発生。数千人が逃げ惑う前代未聞の緊急事態に。「待っているだけじゃ、救えない命がある」と考えるチーフドクター・喜多見はいち早く現場に向かうべきと主張するが、厚生労働大臣が新設した冷徹なエリート集団【YOKOHAMA MER】の鴨居チーフは「安全な場所で待っていなくては、救える命も救えなくなる」と真逆の信念を激突させる。
地上70階、取り残された193名。爆発は次々と連鎖し、人々に炎が迫る!混乱のなか重傷者が続出するが、炎と煙で救助ヘリは近づけない。まさに絶体絶命の危機…
さらに、喜多見と再婚した千晶もビルに取り残されていることが判明。千晶は妊娠後期で、切迫早産のリスクを抱えていた…。絶望的な状況の中、喜多見の脳裏に最愛の妹・涼香を亡くしたかつての悲劇がよぎる――
もう誰も、死なせはしない。命の危機に挑む医療従事者たちの、勇気と絆の物語。
監督:松木 彩
脚本:黒岩 勉
出演:鈴木亮平 賀来賢人 中条あやみ 要潤 小手伸也 佐野勇斗 ジェシー(SixTONES) フォンチー/菜々緒
杏/徳重聡 古川雄大 渡辺真起子 橋本さとし 鶴見辰吾 仲里依紗 石田ゆり子
配給:東宝
© 2023劇場版『TOKYO MER』製作委員会
2023年4月28日(金)全国東宝系にてロードショー
公式サイト:https://tokyomer-movie.jp/