ソ・ジソブは葉が生い茂る大木のような人
──ソ・ジソブはユ・ミンホのミステリアスな部分をさらに強化してくれると確信してオファーされたと聞きました。
これまでソ・ジソブは堅実で強いイメージのあるキャラクターを演じてきましたが、今回、彼が演じたユ・ミンホは隠し事が多く、本編中でいくつもの顔を見せます。彼自身にとっても初めてのキャラクターで、チャレンジしてみたいという気持ちがあったようです。
撮影に入る前には、台本の読み合わせを繰り返しました。何かを演じるというのではなく、日常をそのまま撮っているという感じにしたかったのです。そこでユ・ミンホに関しては、ソ・ジソブに合わせて台本をかなり変えました。具体的にはセリフを少なくし、彼の表情と目つきで表現してもらったのです。ソ・ジソブは今までにやったことがない演技が観客の目にどう映るか、期待と不安が半々みたいな感じで熱心に取り組んでくれました。そのお陰でユ・ミンホはまったく予測できないキャラクターとして、より深みが生まれました。
──ソ・ジソブは撮影現場でキャンディを配ったそうですね。韓国では撮影現場でよくあることなのでしょうか。
僕もそういう光景は初めて見ました。朝、彼はメイクを終えると甘い香りを漂わせながら出てきて、みんなにキャンディを配ってから撮影に入るのです。僕は彼のことをキャンディボーイと呼んでいました。
彼はきちんと役どころを演じるだけでなく、スタッフに気を配ってくれたのです。彼とは初めて仕事をしましたが、慎重でありつつユーモラスもあって、葉が生い茂る大木のような人だと思いました。
──キム・ユンジンが演じたヤン・シネ弁護士はとても難しい役だと思います。演出する際にどんなことを意識しましたか。
ヤン・シネ弁護士の悲哀をどこまで見せて、どこまで隠すか。そのせめぎ合いで、彼女の役はとても難しかったです。表情や目つき、指先の繊細な動きなどを細かくディレクションし、感情が少し足りないと思ったら、「スプーン1杯」といいました。それはスプーン1杯分くらいの感情を入れてほしいという意味です。そうすると彼女がもう一度、そのシーンを演じてくれる。そうやって微妙な塩梅を調整しながら撮っていくのは楽しかったです。