第二次世界大戦を舞台に、ウクライナ人の母が自分の娘だけでなく、同じ屋根の下で暮らしていたポーランド人、ユダヤ人の娘も懸命に戦火から守り抜く。映画『キャロル・オブ・ザ・ベル 家族の絆を奏でる詩』はウクライナ人脚本家の祖母の体験を基にした物語です。ドキュメンタリーを主戦場とするオレシャ・モルグネツ=イサイェンコ監督がロシアによるウクライナへの侵攻を予感していたかのように2021年に制作しました。SCREEN ONLINEでは監督にインタビューを敢行。ウクライナでの上映状況や子役への演出などについて語っていただきました。(取材・文/ほりきみき)

ウクライナでも一部の映画館が発電機を使って上映

──ウクライナの状況に心が痛みます。本作はウクライナの方々もご覧になることはできたのでしょうか。

ウクライナでは2023年1月から7週間、公開しました。停電中でしたが、一部の映画館が発電機を使って上映し、お客さんも見に来てくれたのです。最初から盛況だったというよりも、ご覧になった方の声が広まって、3週間目の週末辺りから多くの方が来てくださるようになりました。ロシアによる侵攻という状況下でも、この作品にカタルシスを感じて満足してくれた人たちが多いです。

画像: オレシャ・モルグネツ=イサイェンコ監督

オレシャ・モルグネツ=イサイェンコ監督

──本作は脚本家のクセニア・ザスタフスカさんの祖母にあたる方が体験されたことを基にしているそうですね。

クセニアのおばあさんは第二次世界大戦のときに、ポーランド人の男の子とユダヤ人の女の子を助けました。しかし、作品に取り込んだのは、そのことだけではありません。私も第二次世界大戦の話を家族からいろいろと聞いています。私は曽祖母がユダヤ人と一緒に住んでいた家で育ち、母は今もその家に住んでいます。第二次世界大戦のときはそこにドイツ人の食堂があったそうです。その街からドイツ軍が撤退すると、今度はソ連の軍が来て暴撃を行い、教会などが壊されたと祖母から聞きました。映画ではいちばん小さいユダヤ人の女の子が外に出てしまったと思って、ポーランド人の女の子が外に探しに出たとき、ドイツ兵に連れ去られそうになり、ソフィアが出生証明書を見せて助けましたが、それは私が祖母から聞いた話です。

画像: ウクライナでも一部の映画館が発電機を使って上映

──ヤロスラワ、テレサ、ディナを演じた子役たちはどのようにキャスティングし、どのように演出しましたか。

100人以上の応募があったので、2カ月かけてオーディションをしました。この作品では歌が重要で、また、演技を最初から教えている余裕がなかったので、歌唱力と映画での演技経験をポイントに選びました。

3人には同じようなテーマで撮られた第二次世界大戦についての映画を見せました。それから、ゲーム形式でさまざまな情報について話し合って知識として理解してもらった上で、これまでの悲しい出来事を思い出して演じるように伝えました。

This article is a sponsored article by
''.