アニメーション映画でも“ヒーロー”がトレンドに
「アメリカではアニメ映画は子ども向けという意識は強かったです。しかし、だんだんその流れは変わってきている気がします。ティーンや大人も実写映画と同じようにアニメ映画を劇場で楽しむようになりました。」
「今回のタートルズはまさにそういった層も狙っているんです。タートルズは今までTVはこども向けアニメ、映画は実写でもっと上の層を狙っていました。僕はその垣根を超えてみたかったですね」
これは僕が本作の監督であるジェフ・ロウにインタビューした時に出てきた言葉です。
監督の言葉を裏付けるように、確かに今年は『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』が大ヒットしています。
この後には『トイ・ストーリー4』のジョシュ・クーリーが監督、クリス・ヘムズワースがオプティマスプライムの声を演じるトランスフォーマーのアニメ映画『トランスフォーマーズ・ワン(原題)』も待機中。
さらに今後のDCを率いるジェームズ・ガン監督もDCヒーローを主人公にした長編劇場アニメーション映画を企画中とのこと。そう、今まで実写映画でなれ親しんできたヒーロー物が長編アニメ映画の世界でもトレンドになりそうなのです。
今回の『ミュータント・タートルズ:ミュータント・パニック!』はまさにこうしたアメリカのアニメ映画界における新しい風の中で生まれた作品と言えます。本作の興行面・批評面での成功はアダルト層にもアピールするヒーロー・アニメ映画の製作をますます後押しすることでしょう。
アーティスティックでとんがっててCOOL!
さて、ロウ監督が言う通り『~ミュータント・パニック!』は(もちろん子どもも楽しめますが)ヤングアダルト層に向けたエンタテインメントに仕上がっています。
まずビジュアルのトーン&マナーがちょっとダークでポップ。これはタートルズの活躍が夜に多いとか彼らが下水道に住んでいる状況だからという理由もありますが、いわゆる子ども向けの明るいカートゥーンな色合いではありません。
そしてグラフィックがアーティスティックでとんがっています。コミックとかグラフィック・ノベルの世界に迷い込んだようだし、『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』に通じるストリート・カルチャー的なセンスがありますよね。要はとてもCOOLなアニメーション・フィルムなのです。
加えて割とブラックでグロい描写も多い。例えばスプリンターが踏みつぶされたゴキブリを食べたり(しかもかつての親友です)、ヒロインのエイプリルは緊張するとゲロを吐いてしまうというとんでもない設定。
動物キャラもいっぱい出ていますが皆モンスター。いわゆるキモかわ。しかもミュータントの大ボス、スーパーフライは人を殺します。健全なディズニーアニメでは考えられないお下品さと過激さ(笑)。
そしてロウ監督はタートルズのティーンの部分にこだわったと言います。ミュータント・タートルズの正式名称は“ティーンエイジ・ミュータント・ニンジャ・タートルズ”といいます。
つまりヒーロー自体が十代です。ロウ監督は極力いまのティーンのカルチャーや気分を取り入れようとしたと。
今回タートルズの声を演じた4人は皆十代の役者です。セリフまわりはこのキャラを演じる4人のアドリブとかアイデアに任せたらしいです。だからタートルズたちのセリフはイキがいい。そう『~ミュータント・パニック!』は正真正銘の若者映画なんです。
マーシャルアーツ&モンスタージャンル映画の要素も!
こうしたテイストに加え、本作の魅力は2つのジャンル映画の要素をうまく取り入れていることです。
1つはマーシャルアーツ映画。もともとタートルズはアメリカで流行っていたニンジャ文化へのオマージュから生まれたキャラであり、なんと本作ではあのジャッキー・チェンがスプリンターの声を当てています。その影響もあってか、ジャッキー・チェンのカンフー映画を意識してアクション・シーンを組み立てたそうです。
そしてもう一つの面白さはモンスター映画。ミュータント動物たちはまさにホラーキャラだし、特にクライマックスは「ゴジラ」「進撃の巨人」といった日本の巨大怪獣ものを意識しています。十代カルチャー×格闘技×モンスター×ヒーロー物、これで面白くなかったら嘘ですよね。
『ミュータント・タートルズ:ミュータント・パニック!』関連記事はこちら
『ミュータント・タートルズ:ミュータント・パニック!』
公開中/2023/アメリカ/1時間40分/配給:東和ピクチャーズ
監督:ジェフ・ロウ
声:シャモン・ブラウン・Jr.、ニコラス・カントゥ、ブレイディ・ヌーン、マイカ・アビー、アイオウ・エディバリー、アイス・キューブ、ジョン・シナ、ポール・ラッド、ジャッキー・チェン
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