強い信頼関係で結ばれている海江田と深町
──大沢たかおさんのそばにいることが多かったと思いますが、大沢さんはどんな方でしたか。
同じ場にいるだけで背筋がすっと伸びる気がして、自然とついていきたくなるような存在感があるのですが、周りを変に緊張させることがなく、明るくて楽しい、しかも優しい方です。1人の人間として本当に尊敬しています。
もちろん役者としても素晴らしい方です。“相手の艦隊から攻撃を受けて、潜水艦がこういう風に揺れている”といったことを想像で演じなくてはいけないところが多かったのですが、大沢さんは“角度はこのくらいだろうか、揺れはどのくらいだろうか”といったことを細かく監督と打ち合わせをして、その違いを細やかに演じられていました。
──玉木宏さん演じる深町洋が海江田に迫る場面があります。大沢さん、玉木さんが対峙する姿を間近でご覧になっていかがでしたか。
シーバットではない人がいるというのは新鮮な光景で、すごく不思議な感覚でした。それまでとは違い、常にモニターに向かっていた乗組員たちが立ち上がって、深町に無言の圧力をかける。あそこでシーバットの乗組員たちは自分たちが“同じ方向に向かっている1つのチームなんだ”ということを確認できた気がしました。淡々としているのがシーバットですけれど、そこは静かに燃える部分が出ていたのではないかと思います。演じていて楽しかったです。
──山中は2人の間に割って入りますね。
大沢さんも玉木さんも昔から見ている方々。その2人の間に割って入らなくてはならなかったので、芝居上は冷静ですが、内心はドキドキしていました。
──この作品は海江田と深町の話に重点が置かれています。
海江田と深町はライバルであると同時にお互いの凄さを知っている。この2人も強い信頼関係で結ばれています。たつなみが攻撃を受けたとき、海江田が「深町なら避ける」というシーンがあるのですが、それは海江田が深町を信頼しているからこそのセリフです。一つの潜水艦を任されている強さみたいなものを感じました。
──中村さんが任務に就くなら海江田と深町、どちらの艦がいいですか。
海江田ですね。シーバットの一員として撮影に参加していましたから。
海江田はある意味,超能力的な凄さを持っているというか、人間離れした人なので、そういう人と一緒にいると自分もすごく成長できそうな気がするのです。また、多くを語らない海江田ですが、「この戦いを無事に乗り越えられたのは君たち乗組員のおかげだ」などと褒めてくれるときもあるのです。飴と鞭ですかね(笑)。
──海江田が褒めてくれたのはモーツァルトの交響曲 第41番 「ジュピター」を使って戦ったときですね。発令所がオーケストラのようでした。
現場では艦が傾いたら体を横に崩したり、自分たちで揺れてみたりしていたのですが、完成した作品を見て、「こんな風になったんだ」と驚きました。
吉野さんは撮影しているときにはすでに画が見えていらっしゃったのか、現場では迷うことはなかったように感じました。もちろん僕の知らないところでいろいろ悩まれたのかもしれません。それでも僕たちには「右後ろ側で爆発したから、そちらから振動を受けた感じ」とか、「海中に潜るときは前に傾くから前傾姿勢になる」などと具体的に演出をしていただきました。スタジオの中に大きな機材を搬入して、セット自体を釣り上げて傾けた状態で撮ったときもあり、演じながらすごいと驚いてしまいました。