手で線を引いて設計し、模型を手作りする。アナログな仕事にこだわるデザイナーの主人公が惹かれた女性は携帯を持っていなかった。2人は毎週木曜日に出会った喫茶店で顔を合わせて絆を育んでいく。映画『アナログ』はビートたけしが書いた初の恋愛小説を原作に、二宮和也が主人公の悟、波瑠が携帯を持たないミステリアスな女性を演じている。メガホンを取ったのはタカハタ秀太監督。原作に惚れこみ、自ら映画化のためにビートたけしの事務所に連絡を取ったという。公開直前にインタビューを敢行。監督の作品に対する思いを聞いた。(取材・文/ほりきみき)

二宮和也、桐谷健太、浜野謙太のバランスが最高

──二宮さんとはどのように水島悟を作っていかれましたか。

役に関しては、あまり話をしていません。二宮さんに限らず、まずは俳優部さんが持ってこられたプランを現場で見させてもらい、僕のイメージと大きく違っていたら、リクエストするといった感じです。今回、みなさんが持ってこられたプランに大きくずれているところがなかったですね。

画像1: 二宮和也、桐谷健太、浜野謙太のバランスが最高

──先日の完成披露イベントで桐谷さんが二宮さんと浜野さんとの3人での会話場面について「15分くらいカメラを止めずアドリブでお芝居するというのを毎シーンやっていました」と話していらっしゃいました。

アドリブとはいえ、好き勝手に話しているのではありません。ある程度のゴールを決めて、こういう話をして、こっちの方向にいってくださいと伝えています。

3人が初めて顔を揃えたのは、焼き鳥屋で陽気に酒を酌み交わすシーンでした。初日とは思えないほど息は合っていたものの、小学校からの幼馴染みとしてはまだ微妙にかみ合っていない気がして、脚本にない余白を撮ってみました。

みゆきが落語好きとわかった後、高木たちが悟に「お前、できるよな」と振っていたのは、「赤めだか」を踏まえてのこと。その先はそれぞれの役を踏襲して、桐谷さんが何となく場を回し、それを二宮さんがのらりくらりとかわし、浜野さんがハイテンションで受け止める。3人のバランスが最高でした。

──みゆきを波瑠さんが演じています。彼女にお願いした決め手はどんなところでしょうか。**

二宮さんと共演したことがない人にお願いしてみたいという気持ちがありました。

画像2: 二宮和也、桐谷健太、浜野謙太のバランスが最高

初めてお会いした時、静かできれいな方だなあという印象でした。「波瑠さんが感じるままに演じてください」とお伝えしたところ、「迷っているところもありますが、まずはやってみます」とおっしゃってました。次に会ったのは衣装合わせ。そこで淡々と衣装を着ていく中で、みゆきをつかんでいかれたのかもしれません。初日のお芝居を見て、安心しました。どんなプランニングをされたのかを尋ねたところ、みゆきはご自身とそんなに遠くない感じがしたそうで、みゆきが話すことや行動に関してNOという感情があまりなかったとおっしゃっていました。

──ポスタービジュアルはブルーが基調になっていますが、衣装もやはりブルーを意識して選んでいかれたのでしょうか。

色は混在していない方がいい。原作を読んでいるときに赤系ではなくブルー系だなと思いました。

──それは海のイメージでしょうか。

ポスタービジュアルの海と空は見事なブルーですが、撮影前はヨーロッパ映画っぽくどんより曇った空がいいなと思っていたんです。撮影当日が快晴で、結果こうなりました。

──波瑠さんがトーク番組で『アナログ』の撮影現場のことを話していました。二宮さんは海の向こうにある飛行場から飛行機が飛んだ瞬間に涙を流したそうですね。

悟とみゆきが出掛けた海は3カ所出てきます。悟が幼い頃、大田区に住んでいた設定なので、家族で潮干狩りに行っていた羽田沖の海岸。高木たちとも遊びにいったかもしれない千葉の海。みゆきの地元の大磯近辺の海。波瑠さんが話していたのは羽田沖の夜の海岸です。2人が向き合って、抱き合うというト書きがあるのですが、「向こうから飛行機が飛ぶから、そのくらいのタイミングで抱き合うのはどう?」と二宮さんに伝えました。ルーズで撮っていたので、波瑠さんだけが二宮さんの涙を見れたんだと思います。

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