手で線を引いて設計し、模型を手作りする。アナログな仕事にこだわるデザイナーの主人公が惹かれた女性は携帯を持っていなかった。2人は毎週木曜日に出会った喫茶店で顔を合わせて絆を育んでいく。映画『アナログ』はビートたけしが書いた初の恋愛小説を原作に、二宮和也が主人公の悟、波瑠が携帯を持たないミステリアスな女性を演じている。メガホンを取ったのはタカハタ秀太監督。原作に惚れこみ、自ら映画化のためにビートたけしの事務所に連絡を取ったという。公開直前にインタビューを敢行。監督の作品に対する思いを聞いた。(取材・文/ほりきみき)

悟の優しさと少しやんちゃな感じが二宮和也と重なる

──本作はビートたけしさんが70歳にして初めて書き上げた恋愛小説を原作にしています。手にされたきっかけと小説の感想をお聞かせください。

僕は恋愛小説を滅多に読みませんが、たけしさんが書かれたものはこれまでいつも読んできましたし、この作品は初の純愛小説と帯にあったので、どんなストーリーなのか、興味を持ちました。

読んでみて、設定の素晴らしさに惹かれました。携帯で連絡を取り合わずに、決まった曜日に決まった喫茶店で会っていた男女が、あるときから会えなくなる。それから…という展開に唸りました。北野武作品との違いを感じました。

画像: タカハタ秀太監督

タカハタ秀太監督

──読んでいる途中から、二宮和也さんで映画にしたいと思ったそうですね。

2015年の年末に放送されたTBS年末ドラマスペシャル「赤めだか」
でご一緒した後、また二宮さんで何か撮りたいと思い、題材を探していました。優しさもあるけれど、少しやんちゃな感じも残っている悟が二宮さんと重なりました。いつの間にか悟を彼にあてはめて読んでいました。「赤めだか」では二宮さんとたけしさんが主演でしたから、これもご縁ではないかと思います。

ただ、完成披露のときにも話しましたが、これまでにラブストーリーを撮りたいと思ったことは一度もありませんでしたから、僕がラブストーリーを持ってきて、二宮さんは驚いてたと思いますけれどね。

──たけしさんにはどのように映画化をお願したのでしょうか。

たけしさんご自身が映画化されるのかと思い、事務所の方にうかがったところ、たけしさんには映画にする発想はないと言われ、僭越ながら手を挙げさせていただきました。しばらくして企画開発の許諾がいただけました。二宮さんにも話したところ、脚本はまだできていない段階でしたが「やりたい」と言ってもらえました。

──大筋は原作と変わりませんが、かなり脚色が加えられています。たけしさんはその点について何かおっしゃっていましたか。

自由に書かせていただきました。事務所の方から「映画を任せたら、本人は何も言いません」と言っていただけたので。もちろん決定稿はお送りして読んでいただいています。それに対して特に直しのお話はありませんでした。

──脚本は決定稿までに33稿を数えたとのこと。脚本開発で苦労されたのはどのあたりでしょうか。

映画作りには正解がないように、恋愛にも正解がない。百人百様です。この作品もそこに苦労しました。性別や世代関係なく、幅広く見てもらうためには、悟以上に悟が惚れたみゆきのキャラクターが少しでもあざとく見えてはいけない。原作のみゆきのミステリアスさ、いい意味でのスノッブさは残しつつ、多くの方に魅力を感じてもらえるキャラクターにするために、セリフの1つ1つを“てにをは”も含めて丁寧に練り上げていきました。

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