真摯な姿勢で人との関係を築くファン・ジョンミン
──前作『リトル・フォレスト 春夏秋冬』(2018)とはがらりと変わった作品で驚きました。
『リトル・フォレスト 春夏秋冬』の前に『提報者 ~ES細胞捏造事件~』(2014)という作品を撮っていますが、本作を含めて、これら3作は同じプロデューサーからオファーしていただき、同じ制作会社が作っています。
私は楊平(ヤンピョン)というところで、畑仕事などをしながら自然と触れ合った生活をしています。それで、『リトル・フォレスト 春夏秋冬』の監督をオファーされたのだと思います。小さい作品でしたが、老若男女問わず好評でしたから、本作にもそれを期待されたのではないでしょうか。
一方、『提報者 ~ES細胞捏造事件~』は2005年に韓国で起きたファン・ウソク博士のES細胞研究捏造疑惑の実話を基にしていて、フィクションとノンフィクションのバランスが非常に難しい作品でした。本作もモチーフ的にとても敏感な問題を扱っており、『提報者 ~ES細胞捏造事件~』の延長線上にあると位置づけできます。私ならバランスよく撮れるのではないかとプロデューサーが判断したのでしょう。
──韓国政府が交渉役として現地に派遣した外交官チョン・ジェホをファン・ジョンミンが演じています。ファン・ジョンミンに主人公を託したのはどうしてでしょうか。
チョン・ジェホは観客に信頼されなくてはならない役どころですが、ファン・ジョンミンならそれができると思ったのです。
自爆テロが起き、吹き飛ばされて負傷するシーンがあるのですが、ワイヤーを装着する必要があり、特殊メイクもしなくてはいけません。非常に難しいシーンです。1回目がうまくいかず、撮り直したのですが、その際、自らアイデアを出してくれてうまくいきました。
最後にタリバンと交渉するシーンがあります。非常に重要なシーンでしたが、私が期待していた以上のエネルギーを放ち、演じ切ってくれました。ファン・ジョンミンをキャスティングしてよかったと思っています。
──ファン・ジョンミンとは『ワイキキ・ブラザーズ』(2001)以来とのこと。監督からご覧になって、変わったところ、変わらないところを教えてください。
ファン・ジョンミンは韓国のトップスターになり、影響力が大きくなりましたね。これまでに多くの作品に出演していますから、映画に関する専門知識やノウハウがかなり増えていて、私の方が学ぶことが多かったです。
でも、映画や芸術に対する情熱は変わっていません。真摯な姿勢で人との関係を築くところも昔のままでした。