韓国人23名がタリバンに拉致され、韓国外務省の外交官と現地の国家情報院の工作員が救出に向けて孤軍奮闘する。映画『極限境界線 救出までの18日間』は実在の事件に着想を得て描いたサスペンス作品である。100億ウォン以上の予算をかけた超大作で、韓国では初登場№1の興収となった。人質救出の交渉役として派遣された厳格な外交官チョン・ジェホをファン・ジョンミン、人命を救うためには手段を選ばない現地の工作員パク・デシクをヒョンビンが演じる。ブロックバスターを撮った初めての女性監督として脚光を浴びているイム・スルレ監督に話を聞いた。(取材・文/ほりきみき)

雰囲気やイメージ、エネルギーすべてが魅力を放つヒョンビン

──ヒョンビンとは今回が初めてですね。

ヒョンビンとは前々から一緒に仕事がしたいと思っていました。ヒョンビンが演じたパク・デシクは国家情報院の工作員です。しかし、韓国映画でよく見るような国家情報院の工作員ではなく、中近東の辺境で自由に生きていて、少し寂しげで孤独なイメージで描きました。ヒョンビンの楽天的で荒い部分を引き出したかったのです。みなさんが知っているヒョンビンとは少し違うかもしれません。

今回はファン・ジョンミンに比べると役どころが大きくなかったので、果たして、オファーを受けてくれるだろうかと心配していました。ところが、シナリオを読んで「やりたい」と言ってくれたのです。ヒョンビンはファン・ジョンミンと親しかったにもかかわらず、一度も共演したことがなかったので、共演したい気持ちが大きかったようです。そういうラッキーがあって、このキャスティングが叶いました。

画像: 雰囲気やイメージ、エネルギーすべてが魅力を放つヒョンビン

──ヒョンビンもさまざまなアクション作品に出演しています。彼からも何かアイデアの提案はありましたか。

アクションというよりも、今回はルックス的な部分ですね。「髭を生やしたらどうか」とか、「ヘアスタイルはこんな感じはどうだろうか」といったアイデアを出してくれました。ヒョンビン本人にもこれまで映画で見せてきた姿とは違った姿を見せたいという思いがあったようです。ヘアやメイクだけでなく、衣装についてもたくさんのアイデアを出してくれました。

銃撃戦でヒョンビンがバイクに乗るシーンがあります。そこはヒョンビンがこれまで組んできたアクションチームに加わってもらったので、その方たちとも話し合いをして、アイデアを出してもらいました。

──監督からご覧になったヒョンビンの俳優としての魅力はどんなところでしょうか。

顔立ちや体格といった見た目からして、とても魅力的ですよね。俳優として声もいい。彼の醸し出す雰囲気やイメージ、エネルギーすべてが魅力を放っています。

──監督が自ら料理の腕を振るって、ホームシックにかかっていた俳優陣やスタッフに韓国料理をふるまったそうですね。

私は肉を食べないので、外食するときに苦労します。ロケ先では韓国料理が作れるように炊飯器や野菜などを持ち込んでいるのですが、今回は泊まっていたホテルにキッチン設備が整っていたので、近くのスーパーで食材を買って、いろいろ作ることができました。現地の羊の肉も使っています。

韓国から一緒に行った俳優のみなさんやスタッフだけでなく、現地で参加してくださったスタッフにもキンパ(韓国式の海苔巻き)やテンジャンチゲ(韓国式味噌チゲ)、キムチなどを作って振舞いました。

韓国料理が大好きなファン・ジョンミンにきゅうりのキムチや玉ねぎの漬物の作り方を教えてあげたところ、彼も作っていました。

──日本の観客にむけてメッセージをお願いします。

この作品はヨルダンで撮影しました。日本の観客のみなさんには恐らく見慣れない風景だと思います。そういう風景の新しさの中でファン・ジョンミンとヒョンビンがこれまでとは違った演技を見せてくれています。2人のがらりと変わった姿を楽しんでいただければと思います。

キリスト教であれ、イスラム教であれ、どんな宗教やイデオロギーであれ、極端な状況になってしまうことがどれほど危険で愚かなことなのか。それをこの作品を通じて知ってほしいと思い、監督を引き受けました。その点も考えながらご覧いただけるとうれしいです。

<PROFILE>
イム・スルレ

1960年生まれ。漢陽大学英文科、同大学院演劇映画科を経て、フランスのパリ第8大学で映画学を学び修士号を取得し、帰国後に1994年に製作した『雨中散歩』がソウル短編映画祭で最優秀作品賞を受賞し、一躍脚光を浴びる。その後も『ワイキキ・ブラザーズ』や『私たちの生涯最高の瞬間』『リトル・フォレスト』などで数々の映画賞を受賞するなど、韓国の映画界を担う女性監督の一人。

主な監督作品:
2018年『リトル・フォレスト 春夏秋冬』
2014年『提報者 ~ES細胞捏造事件~』
2008年『私たちの生涯最高の瞬間』

『極限境界線 救出までの18日間』
10月20日(金)TOHOシネマズ 日比谷 他 全国ロードショー

画像: 映画『極限境界線 救出までの18日間』予告編【10月20日(金)全国順次ロードショー】 www.youtube.com

映画『極限境界線 救出までの18日間』予告編【10月20日(金)全国順次ロードショー】

www.youtube.com

<STORY>
アフガニスタンの砂漠を旅する韓国人23名がタリバンに拉致された!彼らの要求は国内に駐屯する韓国軍の撤退と、刑務所に収監されたタリバン戦士23名の釈放、期限は24時間。韓国政府は直ちに外交官のチョン・ジェホ(ファン・ジョンミン)を派遣、ジェホはアフガン外務省に釈放を要請するが拒絶される。国家情報院も動き出し、工作員パク・デシク(ヒョンビン)がアフガンのフィクサーに交渉するが、あと一歩で決裂。「韓国政府の代表」を自負するジェホとアウトローなデシクは不本意ながら手を組むことに。 迫るタイムリミット、身代金狙いの詐欺師、国民より国家ファーストの政府──2人が命をかけた最後の交渉とは?

<STAFF&CAST>
監督:イム・スルレ
出演:ファン・ジョンミン『哭声/コクソン』、ヒョンビン「愛の不時着」、カン・ギヨン「ウ・ヨンウ弁護士は天才肌」
原題:교섭/英題:The Point Men/109分/韓国/カラー/シネスコ/5.1CHデジタル/字幕翻訳:根本理恵
配給:ギャガ <PG12>
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