かつて「狛江の狂犬」と恐れられていた伝説の超不良・井口達也が少年院を出所後、千葉で叔母夫婦が営む焼肉屋で働きながら、新たな生活をスタートさせた。ところが暴走族「斬人」の副総長・安倍要と強い絆で結ばれたことから、激しい抗争に巻き込まれてしまう。映画『OUT』は品川ヒロシ監督の中学時代からの親友・井口達也の破天荒な人生を仲間たちとの絆を通して描く実録青春ムービーである。井口から熱望されて映画化した監督に、作品への思いや脚本開発の苦労、こだわりのアクションについて語ってもらった。(取材・文/ほりきみき)

要は達也にとってヒロインのような存在

──丹沢敦司を演じた醍醐虎汰朗さんのアクションは素晴らしいですね。

醍醐虎汰朗という名前が挙がってきたので「ハイキュー!!」の舞台版を見てみました。マンガみたいにぐーっと反るスパイクを虎汰朗が舞台上でやっていたので、この運動神経なら大丈夫だろうと思いました。案の定、できなかったバク転も練習をしたら30分でできるようになった。すごいですよね。敦司のアクションはトリッキーなものにしてみました。

画像: 丹沢敦司(醍醐虎汰朗)

丹沢敦司(醍醐虎汰朗)

──敦司は仲間をとても大事にしていますが、その分、仲間を傷つけたり、裏切ったりした者に対する冷酷さが際立ちました。

敦司は仲間思いですが、感覚はどちらかといえば一雅に近い。おちゃらけているけれど、根っこに流れているのはダークサイドだと虎汰朗には話しました。虎汰朗はそれを目の表情の切り替えだけで見事に演じ分けてくれましたが、それって読解力だと思います。リハーサルの段階からそういう顔をしていましたから。

画像: 安倍要(左、水上恒司)

安倍要(左、水上恒司)

──安倍要を演じた水上恒司さんはいかがでしたか。

水上くんは爽やかに見えますが、小学生の時に始めた野球を高校までやっていたので、作り込むと迫力がある。体重を5キロくらい増やして、体を大きくして臨んでくれました。意外に髭が濃く、髪型と髭でビジュアル的にもしっかり要になりました。

アクションは初め、全然ダメでしたが、2回目の練習のときに激変しました。野球をやっていたから体幹が強いのでしょう。要に説得力が出ました。

劇画チックな喋り方も水上は自分のものにしてくれました。病室の枕元の折り鶴を見て「何だ、この汚ねえ鶴は?」って言うセリフがあるのですが、バカにしているようで、その言葉にはちゃんと愛情が籠っている。男っぽさが要からあふれていました。

そんな要ですが、達也にとってはヒロインのような存在でもあります。ゲバラ三兄弟の三男・下原賢三と最後に激闘する達也には“要の敵”という想いも載っかっているんです。そのことを水上くんにも伝えました。達也と要の関係はそれだけ重要なのです。

──敦司は一雅に近いけれど、要は違いますね。

要は「仲間のため」だけの男なんです。達也を巻き込んだことを後悔するような漢気があることを水上くんに伝えました。

──長嶋圭吾を與那城奨さん、目黒修也を大平祥生さん、沢村良を金城碧海さんが演じていますが、ルックスを重視し、コミックの3人にどこまで似せられるか、徹底的にこだわったと聞きました。

ルックスで決めたところもありますが、3人それぞれに目黒、沢村、圭吾役をやってもらい、役柄としてもあっているかどうか見た上で決めています。正直、そのときは似るかどうか自信はありませんでした。ここまでコミックのキャラクターに似たのは、髪型やメイク、何といっても彼らの努力の賜物です。

──與那城さん、大平さん、金城さんにはどのように演出をされましたか。

彼らは俳優が専業ではありませんが、パフォーマーとして歌詞に気持ちを乗せて歌うわけで、それって演技なわけですよ。しかも、彼らは仲がいいけれど、オーディションがあれば“負けられない”という気持ちになるはず。みんな大人だから、それを言葉にしませんけれどね。負けられない気持ちを100%解放して、口に出してしまうのがヤンキー。それがぶつかり合うと暴力に発展してしまうのです。そう考えれば、心の中にない気持ちではありません。そういう彼らの中にあるものを大きく膨らませるように演出しました。

This article is a sponsored article by
''.