アクションが映画を撮る醍醐味
──みなさんが監督のアクションを褒めていらっしゃいます。
アクション映画が好きで、格闘技をやっています。映画を撮る醍醐味の中でアクションが占める割合はかなり大きいですね。
この作品のスタントコーディネーターは富田稔さんですが、自分で考えた部分もかなりあります。
──参考にされた映画作品はありますか。
最近の邦画はアクションが面白くなってきています。しかし、今回は他の作品で見たことがないカット割りを意識し、「えっどうやって顔を踏んでいたの?」、「屋上のシーンは落ちそうだけれど、どうやって撮ったの?」となるように工夫をしました。
─アクションでどんなところにこだわりましたか。
痛さやエグさが原作の魅力でもあるので、それをどうやって表現できるかが実写化におけるテーマでもありました。みんなで考え、いろいろ試行錯誤しながらやってみました。
その1つが柔術という寝技です。虎汰朗と一雅役の宮澤佑には僕が習っている柔術の道場で技を覚えるところから始めてもらいました。屋上の端で戦っているように見せ、敦司と一雅の寝技は今までにないアクションになったのではないかと思います。
もう1つはミニマムな世界でお金を使うことです。高速でバイクのアクションシーンを撮るのは見栄えはいいかもしれませんが、予算に合いません。そこで背伸びしてお金を使ってしまい、他で削ることはしたくない。敦司が痛めつけた相手の顔を踏んでいるシーンを本当に踏んでいるように見せるためにCGを使うなど、小さいところにこだわってCGを使ったのが、他のアクション映画と違うところだと思います。
──達也と賢三が戦うシーンは疲れや痛みがしっかり伝わってきました。
最後の一騎打ちは魂の殴り合いをいかにどう見せるかを意識しました。2日間掛けて撮っていたので、倉も賢三役の仲野温も髪は本当に乱れているし、疲労も半端ないので、メイクでは出せないダメージの蓄積があのバトルには載っています。しかも、あえて途中で劇伴もなくすというテクニカルなこともしているので、ボロボロになった生き様が表現できたのではないかと思っています。
ヤンキー映画は『OUT』で最後
──原作の連載はまだ続いています。シリーズ化していくのでしょうか。
この先1人1人がどうなっていくのかというストーリーがあるので、できれば続きも映画にしたいですね。アクションに関しても、「これ、どうやって撮ったんだろう」ということをもっとやってみたい。アイデアもすでにあるのです。
しかしヤンキー映画は『OUT』で最後にするつもりです。
──「チキン」の映画化はいかがでしょうか。
小学生ですよ、誰がやるの?(笑)。
俺が『ドロップ』を作ったときに、「お前が『OUT』を書いたら、これでドロップアウトが完成するよね」と井口に話したことがありました。“ドロップ”は不良を表している言葉ではありませんから、最初はドロップアウトというタイトルにしようと思っていたのですが、ゴロの良さからドロップにしました。これに今回の『OUT』がついてドロップアウトが完成するのです。
──これからご覧になる方々にひとことお願いします。
ちょっと笑えて、ちょっと泣ける。しかもアクションで盛り上がれる。ヤンキー映画が苦手な方もちゃんと楽しめるエンターテインメント作品になっていると思います。多くの方にご覧いただけるとうれしいです。
<PROFILE>
品川ヒロシ
1972年4月26日生まれ。東京都出身。
1995年、東京NSC1期生同士の庄司智春とともに品川庄司を結成。お笑い芸人として活躍する一方、俳優、映画監督など活動の幅を広げ、2009年に自身の自伝的小説を原作にした映画『ドロップ』で長編監督デビュー。興行収入20億円の大ヒットを記録する。主な監督映画作品に『漫才ギャング』(11)、『サンブンノイチ』(14)、『Zアイランド』(15)、『リスタート』(20)など。2023年にはWOWOW連続ドラマ「ドロップ」の監督・脚本をつとめ大人気作を自らの手で完全リブートした。
『OUT』11月17日(金)全国劇場公開
<STORY>
暴走族「東京狛江愚連隊」の特攻隊長として暴れ回り、かつて「狛江の狂犬」と恐れられていた伝説の超不良・井口達也が少年院を出所した。昔の仲間と連絡をとらないように、地元から遠く離れた西千葉で、おじちゃん、おばちゃんが営む焼肉屋「三塁」で働く新たな生活をスタートさせた彼は、保護観察中で、次に喧嘩をしたら一発アウトの身だ。ところが、ひょんなことから千葉の暴走族「斬人(キリヒト)」の副総長・安倍要と強い絆で結ばれたことから、違法薬物を売りさばく半グレ集団「爆羅漢(バクラカン)」との血で血を洗う激しい抗争に巻き込まれることになって……。
<STAFF&CAST>
原作:井口達也/みずたまこと『OUT』(秋田書店「ヤングチャンピオン・コミックス」刊)
監督・脚本:品川ヒロシ
音楽:武史(山嵐/The Ravens)
主題歌:JO1「HIDEOUT」(LAPONE Entertainment)
出演: 倉 悠貴 醍醐虎汰朗 与田祐希(乃木坂46) 水上恒司
與那城 奨(JO1) 大平祥生(JO1) 金城碧海(JO1)
小柳 心 久遠 親 山崎竜太郎 宮澤 佑 長田拓郎 仲野 温
じろう(シソンヌ) 大悟(千鳥) 庄司智春(品川庄司)/渡辺満里奈 杉本哲太
配給: KADOKAWA
©2023『OUT』 製作委員会
公式サイト:https://movies.kadokawa.co.jp/out-movie/