アクションとして見せ場はほしいけれど、暴力を肯定したくない
──本作の主人公である井口達也は監督のご友人がモデルで、井口さんご本人が映画化を望んでいたそうですね。
映画『ドロップ』(2009)という僕の中学時代をベースにした作品が終わった頃、井口が「チキン」(2009)という僕が彼の中学に転校してくる前の話を書き始めました。『OUT』は僕がまた転校していなくなってから、彼が暴走族になって大暴れして、少年院に入った後の話ですが、その頃から映画にしてくれと言われていましたから、かれこれ10年以上前から切望されていました。
しかし、撮りたいという気持ちだけでは映画化は難しい。井口が小説の「アウト-不良の流儀-」(2014)を書き、それをみずたまこと先生がコミックで描いて、人気シリーズになったので、実現できました。
──原作コミックはまだ連載が終わっていません。映画の着地点をどのようにお決めになりましたか。
コミックは続いていても、映画としては区切りをつけなくてはいけません。4巻で、ある団体との抗争が終わるので、そこを縦軸にして描くことにしました。
みずた先生は「映画は監督のものなので、口は出しません」とおっしゃっていましたが、こちらからお願いして、アドバイスをしていただきました。原作をリスペクトしながら、少しオリジナルをいれても面白くなるように何度も書き直し、2時間という尺の中で自信を持てる脚本になりました。
──井口さんからの希望はありましたか。
ありません。全部、お前に任せると言ってくれました。
──本作の脚本開発で苦労したのはどの辺りでしょうか。
プロデューサーは大人にも見てほしいので、大人を出してほしいと言ってきます。しかし、子どもたちはわ〜っと喧嘩して、一気に分かり合いますから、大人が急に出てくると浮いてしまいます。大人の立ち位置がとても難しかったですね。
しかもヤンキー映画ですから、アクションとして見せ場はほしいけれど、暴力を肯定したくない。例えば、おじちゃんはちゃんと叱って、喧嘩を絶対に肯定しない。当然、後押しなんかしません。それでも、達也が行かざるを得ない状況まで持っていくのがすごく難しく、何回も書き直しました。説得力があるのは、おじちゃん役の(杉本)哲太さんのおかげです。
──人間ドラマの部分にじんときました。
これだけアクションシーンが多いと、人間ドラマの部分は少なくなってしまいます。達也が追い詰められて、追い詰められて、追い詰められたところで、ドラマがどんと入ってくるという構成にし、少ないシーンでも達也のおじちゃんとおばちゃんに対する思いなどは一発で伝わるように意識しました。