何者でもない若者たちの青春の物語
──本作は監督のこれまでの作品とは大分、趣が違います。EXILE HIROさんからのオファーとのことですが、お話を聞いて、どう思いましたか。
HIROさんとお会いする機会があって、そのときにTHERAMPAGEの3人それぞれの短編を撮ってみないかというお話をいただきました。HIROさんはエンターテイメントの世界で活躍されてきた方です。そんな方に直接お願いされるのは、とても光栄なこと。そういう意味ではHIROさんという人物への尊敬の念がいちばん大きかったですね。
キャリアの途中から女性が主人公の作品が多くなってきていたので、そろそろ男性の物語を作りたいというのもありましたし、自分自身としても新しいことに挑戦してみたいという気持ちがあったのでお受けしました。
──ご自身のどんな部分を評価されてのオファーだと思いますか。
HIROさんは僕が大学時代に作った『Calling』(2012)から最近の作品まで全部、丁寧に見てくださっていたのです。『Calling』は自主映画で、スタッフと役者合わせて4人くらいの作品です。オファーを下さる方でそんな大昔の作品から見てくださる方はなかなかいません。
『走れ、絶望に追いつかれない速さで』(2015)もご覧くださっていて、「監督の作品を見ていると自分が何者でもなかったころのことを思い出すんだよね。今回は何者でもない若者たちの青春の物語を作りたい」と言われたことが印象深く記憶に残っています。HIROさんはそこを評価してくださったのかもしれません。これは自分としてはすごくうれしい。自分の中でやりたいモチベーションになりました。
──当初は長編ではなく、短編の予定だったのですね。
最初はCINEMA FIGHTERS projectとして、壱馬、RIKU、北人それぞれ1本ずつという話でしたが、途中でプロデューサーから「別々に公開するのではなく、1本化したらどうだろうか」と提案がありました。恐らくHIROさんの意向もあったのだと思います。
これまでは毎回違う監督が撮ってきましたが、今回は自分に3人分任せていただいた。それならば、1本の作品にした方がいいと僕自身も思っていましたし、ファンの方もそのほうが見やすいと思ったので、このような形になりました。