ラジャーと同じ服装でオーディションに挑む
──ラジャーの声はオーディションで決まったそうですね。
1枚の絵とセリフをいただき、ラジャーという存在に魅せられて、オーディションを受けさせていただきました。
どうしてもラジャーを演じたかったので、絵に描かれていたラジャーと同じようなボーダーのTシャツを着て、Gパンをはき、ラジャーの気持ちになってオーディションを受けました。残念ながら金髪にはできませんでしたけれどね(笑)。
──オーディションはどのような形で行われましたか。
事前に渡されていたセリフを言いましたが、ものすごく緊張しました。合格を知ったのは、母と一緒に祖母の家にいるときです。マネージャーさんから電話が掛かってきました。うれしくて思わず涙が出てきてしまったほどです。収録のときに西村さんから「オーディションにラジャーの洋服で来ていたよね」と声を掛けていただき、「見ていてくださったんだ」とうれしくなりました。
──収録までにどのような準備をされましたか。
事前にスタジオポノックさんのスタジオにうかがい、スタッフの方々が一生懸命に取り組んでいる姿を見せていただきました。手描きだからこその温かさが伝わってくるだけでなく、僕がオーディションを受ける前から何年も掛けて、この作品が準備されてきたことを知り、感動しました。
その後、西村さんや百瀬監督がラジャーのキャラクターだけでなく、他のキャラクターやラジャーたちの想像の世界についても話してくださったので、それをノートに書き留めて、自分の中に落とし込んでいきました。
──ラジャーとご自身に共通するところはありますか。
似ているところと違うところがあります。信念の強さは似ています。何でも素直に捉え、一度自分で決めたら、「大丈夫。できる」とポジティブに取り組めるラジャーと違って、僕は反抗期なので(笑)、物事に対して斜に構えて見てしまうことが多いのです。この作品でラジャーを知り、ラジャーのようにありたいと思うようになりました。
──寺田さんご自身の中にイマジナリはいますか。
僕にとっては、生まれたときからそばにいる熊のぬいぐるみのコロちゃんがイマジナリでした。日常会話を交わしたり、何かあれば相談したりして、どこに行くにも一緒。それが小学生高学年になった頃からふっと声が聞こえなくなったのです。何か節目があったわけではありませんが、コロちゃんがいなくても僕は大丈夫なんだということだったのでしょうね。コロちゃんは大切な何かを残してくれたと思っています。
──ラジャーを演じるにあたり、コロちゃんとの関係性は参考になりましたか。
ラジャーとアマンダ、僕とコロちゃん。時間の過ごし方は違いますが、関係性はすごく似ています。コロちゃんはまだ机の上にいるので、コロちゃん自体を忘れることはないのですが、思い出が甦ってきて、温かい気持ちで心が包まれるような気がしました。
ただコロちゃんがラジャーと同じ立ち位置で、僕はラジャーをやるということだったので、ラジャーを演じるための参考にするというよりも、コロちゃんもこんな気持ちだったのかなということがラジャーを通じて少しわかった気がしました。