長い下積み時代を経て『ロッキー』で一躍世界的スターになり、『ランボー』などでトップ・スターとして一時代を築いたシルヴェスター・スタローン。その後も長い間、キャリアを積み重ね、「エクスペンダブルズ」シリーズなど近年まで第一線で活躍を続けています。やはりアクション映画出演が多い印象の彼ですが、その映画人生を主なキャラクターで振り返ってみると、スタローンが様々な役を演じて分けてきたことがわかります。(文・田中雄二/デジタル編集・スクリーン編集部)
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アメリカン・ドリームを叶えた男、シルヴェスター・スタローンの映画人生

シルヴェスター・スタローン主演の最新作『エクスペンダブルズ ニューブラッド』公開に寄せて、77歳となった今もアクション映画にこだわり続ける男の映画人生を振り返ってみたい。

1970年代『ロッキー』でアメリカン・ドリームを実現

1946年7月6日、シチリア系移民の子としてニューヨークで生まれたスタローンは、貧しい家庭に育ち、少年時代は不良だった。そして俳優を目指してマイアミ大の演劇科に入学するも中退。なかなか芽が出ず、ポルノ映画にも出演した。

1973年に捲土重来を期してハリウッドに移るも、エキストラや端役が続き、『デス・レース2000年』(1975)、『さらば愛しき女よ』(1975)が少々目立った程度だった。

だが1975年、モハメド・アリ対チャック・ウェプナーの世界戦に感動したスタローンは、無名のボクサーが無敵の王者を相手に善戦するという脚本を3日間で書き上げる。そして自身が主演することを条件に映画会社に売り込んだ。

こうしてボクシング映画の金字塔となった『ロッキー』(1976)が誕生する。この映画でスタローンはアカデミー賞の主演賞と脚本賞の候補となり、自身の受賞はならなかったものの作品賞と監督賞(ジョン・G・アヴィルドセン)を受賞。

折しもアメリカは建国200年を迎え、アメリカンドリームの復活が叫ばれたことで、主人公のロッキーとともに、売れない俳優だったスタローンもその象徴とされ、一気にスターダムにのし上がった。

シルヴェスター・スタローンが演じた情熱たぎる男たち
ロッキー・バルボア(「ロッキー」シリーズ)

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三流ボクサーとしてうだつの上がらなかったロッキーが、チャンプと戦うチャンスを得たことから一念発起。負け犬人生を一変させる。無名だったスタローンが一躍スターダムに。作品はシリーズ化され、『ロッキー・ザ・ファイナル』(2006)まで6作が製作された。

ただし、『ロッキー』の余勢を駆って出演した、全米長距離トラック協会のリーダーを演じた『フィスト』(1978)、監督デビュー作でイタリア系の三兄弟の愛を描いた『パラダイス・アレイ』(1978)、ロッキーが世界チャンピオンとなる監督兼任の『ロッキー2』(1979)は、いずれも佳作だったが、興行的には振るわなかった。

シルヴェスター・スタローンが演じた情熱たぎる男たち
ジョニー・コヴァック(『フィスト』)

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全米長距離トラック協会(FIST)の若きリーダーとして中央委員長の座にまでのし上っていく青年。これはもちろん謎の失踪を遂げたことで知られる全米トラック運転手組合の委員長ジミー・ホッファをモデルにしている。スタローンは社会派映画の大役を成し遂げた。

シルヴェスター・スタローンが演じた情熱たぎる男たち
コスモ・カルーボニ(『パラダイス・アレイ』)

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NYのスラム街で暮らすカルーボニ三兄弟の次男コスモを演じる。いつか貧しい境遇から抜け出すことを夢見る兄弟は、力の強い末っ子ヴィクターを街のクラブで行われている賭けレスリングに出場させ、成功を目指すが…。スタローンの監督デビュー作でもある。

1980年代「ロッキー」と「ランボー」がシリーズ化

1980年代に入り、『ナイトホークス』(1981)、『勝利への脱出』(1981)、監督作の『ステイン・アライブ』(1983)が興行的に失敗する中、スタローンは、自身にとってロッキー・バルボアと並ぶ代表的なキャラクターとなるジョン・ランボーと巡り合う。

シルヴェスター・スタローンが演じた情熱たぎる男たち
ディーク(『ナイトホークス』)

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国際的テロリストと戦うNYのディーク刑事をスタローンが演じるアクション・サスペンス。ロンドンで事件を起こしNYに潜入中のテロリストをディークと相棒のフォックスが追う。スタローンは長髪に髭も蓄えた姿で凄腕刑事を熱演。おとり捜査で女装まで披露する。

シルヴェスター・スタローンが演じた情熱たぎる男たち
ロバート・ハッチ(『勝利への脱出』)

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第2次世界大戦中、独軍の捕虜となっていた連合軍の兵士が独代表チームとのサッカー試合を行うことになり、その裏で脱走計画が進行する。スタローンはゴールキーパーとして試合に出場する米軍のハッチに扮し、サッカー・センスも抜群であることを示している。

PTSD(心的外傷後ストレス障害)を抱えるベトナム戦争帰還兵の元グリーンベレーを主人公にした『ランボー』(1982)は好評を得て、『ランボー/怒りの脱出』(1985)、『ランボー3/怒りのアフガン』(1988)が製作された。

シルヴェスター・スタローンが演じた情熱たぎる男たち
ジョン・ランボー(「ランボー」シリーズ)

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ロッキーと共にスタローンの代表的キャラとなり、シリーズは5作目まで作られている。最初は心的外傷ストレスを抱えるベトナム帰還兵だったが、2作目以降、仲間のために戦場に戻り敵と戦う勇猛なヒーローに。戦闘能力の高さと裏腹に平穏に暮らすことを望む。

「ロッキー」シリーズも『ロッキー3』(1982)、『ロッキー4/炎の友情』(1985)と続き、スタローンは、ハリウッドのトップスターになる。

だが、当初は地味なキャラクターだったロッキーとランボーが、時のレーガン政権の“強いアメリカの復活”という政策に呼応して、強さを前面に押し出す形に変化したことに伴い、スタローン自身もマッチョな肉体を誇示するようになる。

また下積み時代に結婚した妻を捨て、『ロッキー4』で共演したブリジット・ニールセンと再婚するが、翌年離婚するなど私生活も迷走。

興行的な成功とは裏腹に、常連となったゴールデン・ラズベリー賞(その年の最低の映画を選んで表彰)で、「ランボー」2作と『ロッキー4』に『コブラ』(1986)、『オーバー・ザ・トップ』(1987)、『ロックアップ』(1989)、『デッドフォール』(1989)を加えて、「10年間の最低男優賞」を受賞してしまう。

シルヴェスター・スタローンが演じた情熱たぎる男たち
マリオン・コブレッティ(『コブラ』)

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ロス警察の優秀な刑事ながら、正義感が強すぎて、時に独断的で強引な手口を使って事件を解決する面も持つ“コブラ”が冷酷残忍な集団の殺人現場を目撃したため命を狙われるモデルの警護を担当する。モデル役の当時の妻ブリジット・ニールセンとの共演が話題に。

シルヴェスター・スタローンが演じた情熱たぎる男たち
リンカーン・ホーク(『オーバー・ザ・トップ』)

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10年間、理由あって離れて暮らしていた息子と再会するトラック運転手。最初は嫌われていたが次第にその関係も良好になるかと思われた時、妻の父から妨害が……。スタローンは息子への愛情を示すためアームレスリング大会に出場するホークの心情を汲んだ好演。

シルヴェスター・スタローンが演じた情熱たぎる男たち
レイモンド・タンゴ(『デッドフォール』)

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ロス警察の対照的な2人の麻薬取締担当刑事が市警No.1の座を競いながら、犯罪組織の罠で冤罪をかけられ協力して窮地を脱出する刑事アクション。スタローンが高級スーツ姿の頭脳明晰な刑事タンゴを演じ、カート・ラッセルがワイルドなキャッシュ刑事を演じる。

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