水上恒司のキャスティングの決め手は魅力的な“目”
──木竜麻生さんが演じた足立よしこは謎めいた女性ですね。
足立に関してはいちばんつかめない人として描こうと最初から決めていました。つかめないということに繋がってくるのですが、足立は多趣味です。農業をやり、猟もする。自分が仕掛けた罠に気を取られて、他人が仕掛けた罠に掛かってしまう。アメリカに住んでいたこともある。いろんなカルチャーが混ざった人です。多面的で、本当の足立はどこにあるんだろうと思える人物にしました。
──足立がカトリック信者だったのが意外でした。
沙苗は隼人への愛を信じているので、足立にも何か別の信じる対象を持っていてほしい。そういう思いで足立はカトリック信者になりました。足立にとって無意識に寄り添える先だったりふっと安心できる場所がカトリック教会なんだと思っています。
──木竜さんとはどんな話をされましたか。
木竜さんから「足立が聞いている音楽を知りたい」と聞かれました。木竜さんが自分の中に役を落とし込んでいくために、毎回されていることではないかと思います。イ・ナウォンさんと話し合って、何曲かお送りしました。
──具体的にはどのような曲でしょうか。
足立がアメリカに住んでいたのは2000年前後という設定だったので、その当時、流行っていたポップソングと父親が聞いていたカントリー音楽などを提案しました(ノラ・ジョーンズの曲や
Donna Stewart & Ron Andrico「When you and I were young マギー、若き日の歌を」など)。健太が足立の家を訪れたときに流れていたワルツも加えていたと思います。
──沙苗が愛した望月隼人を水上恒司さんが演じています。なぜ水上さんに隼人をお願いしたのでしょうか。
以前から水上さんの顔を見てすごく魅力的な方だと思っていたのですが、特に“目”が決め手でした。隼人の顔は終盤の一瞬しか映らないということもあり、瞳の奥に何が映っているのか分からない程に澄んだ目の水上さんにオファーしました。
──これからご覧になる方にひとことお願いいたします。
愛について正面から描きましたが、愛に付随して、誰かのそばに“いること”と“いられないこと”について描いた映画になっているのではないかと思います。その辺りを感じていただければと思います。
<PROFILE>
監督:山本英
1991年生まれ、広島県出身。東京造形大学で映画を学ぶ。大学卒業後、映像制作会社で働く傍ら広島に住む祖父を撮影した『回転(サイクリング)』(15)が第38回ぴあフィルムフェスティバルに入選する。その後、東京藝術大学大学院映像研究科に進学し、映画監督の諏訪敦彦、黒沢清に師事。修了制作の『小さな声で囁いて』(18)は第29回マルセイユ国際映画祭、第20回全州国際映画祭に正式出品された。商業デビュー作である本作は第28回釜山国際映画祭ニューカレンツ部門、第60回台北金馬映画祭へ出品され、国外からも注目が集まっている。
『熱のあとに』
2月2日(金)新宿武蔵野館、渋谷シネクイントほか全国ロードショー!
<STORY>
愛したホスト・隼人を刺し殺そうとした過去を持つ女・沙苗。
事件から6年の時が経ち、出所した沙苗は林業に従事する健太とお見合いで出会い、結婚する。健太は沙苗の過去を知り、受け入れた上で結婚に踏み切ったのだった。
平穏な結婚生活が始まったと思っていた矢先、2人の前に謎めいた隣人の女・足立が現れる。気さくに接してくる足立が抱える秘密とは。そして、全てを捧げた隼人の影に翻弄される沙苗がたどり着いた、“愛し方”の結末とは――。
<STAFF&CAST>
監督:山本英
脚本:イ・ナウォン
プロデューサー:山本晃久
出演:橋本愛 仲野太賀 木竜麻生
製作:ねこじゃらし、ビターズ・エンド、日月舎
制作プロダクション:日月舎
配給:ビターズ・エンド
英題:After the Fever
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