新種薬物事件の背後で蠢く日本のヤクザと汚職刑事たちを“怪物刑事”マ・ソクトが追い詰めていく。映画『犯罪都市 NO WAY OUT』はマ・ドンソクが拳ひとつで最狂の悪党たちを撃ち破る『犯罪都市』の3作目である。本作ではシリーズ初となる2人の最強ヴィランが登場。敵役の一人として青木崇高が抜擢され、極悪非道な“ヤクザの殺し屋”リキ役を演じた。公開を機に、マ・ドンソク氏がイ・サンヨン監督とともに公式初来日。青木崇高氏も一緒にSCREEN ONLINEのインタビューに応じてくれた。(取材・文/ほりきみき)

映画をきっかけに“韓国で起きている犯罪を一掃したい”

──今回は日本のヤクザも関わる新種薬物事件の話ですが、着想のきっかけは何かあったのでしょうか。

マ・ドンソク氏(以下、マ):『犯罪都市』シリーズでは実話を基にして物語を作っています。以前、韓国で日本のヤクザと台湾のギャング団が麻薬を巡って戦ったという事件がありました。その事件を中心に他の事件もいくつか織り交ぜながらアイデアを練っていきました。

このシリーズは“韓国で起きている犯罪を一掃したい”という思いで撮っています。国境を越えた犯罪モノを作っているのも、そこに理由があります。

企画は私が立ち上げますが、脚本は2人の脚本家が書いてくれたものを私と監督が膝を突き合わせて脚色していきます。実話をベースにしつつ、それぞれのキャラクターを活かしたアクションやユーモア、コメディも入れて、エンターテインメントとして楽しめるものを作るのは大変ですが、『犯罪都市』を作るプロセスは自分たちの夢を叶える過程でもあるという気持ちで取り組んでいます。

画像: (左から)イ・サンヨン監督、マ・ドンソク、青木崇高

(左から)イ・サンヨン監督、マ・ドンソク、青木崇高

──日本のヤクザを描く際、参考にした作品などはありましたか。

:ヤクザの設定を間違えるとファンタジー映画に変わってしまうので、実際に日本の俳優が演じなければならないと思いましたが、参考にした作品はありません。

青木(崇高)さんをキャスティングするに辺り、彼が出演された作品を全て見ました。『るろうに剣心』シリーズでは強烈な姿を見せていますが、ドラマでは優しく純粋な役もやっている。いろんな魅力を持った俳優だと思い、監督にキャスティングの提案をしました。

──青木さんは脚本を読んで、役どころをどうとらえ、どのようにアプローチされましたか。

青木崇高氏(以下、青木):私が演じたリキは日本刀を使う殺し屋で、國村隼さんが演じる親分がいて、親分にとても忠実な子分。しかも狂気を感じさせるキャラクターです。その狂気を3種類くらいに分け、カメラの前に立って芝居をしてみて、どの狂気のチャンネルでリキのベースを作るかを監督と相談しながら作っていきました。

画像: 映画をきっかけに“韓国で起きている犯罪を一掃したい”

衣装に関しては小物のピアスやサングラスは自分で日本から持っていき、監督やドンソクさんに「これどうでしょうか」と提案したりしました。お互いいろいろな意見を出し合って複合的にキャラクターが出来上がっていったと思います。

アクションに関しては、一緒に仕事をしたことのある『るろうに剣心』のアクションチームとトレーニングを行い、その映像を韓国のアクションチームに送ってフィードバックと指示をもらいました。というのも日本刀の使い方が日本とは少し違ったのです。

『犯罪都市』シリーズは個人的にも見ていましたが、毎回ヴィランが魅力的なキャラクターなので、アクションが格好悪かったら話にならない。できる限りの準備をしました。現場では韓国のアクションチームが素晴らしくクリエイティブなサポートをしてくださったので、リキはとても格好よくなったと思います。

──監督からご覧になって、現場での青木さんはいかがでしたか。

イ・サンヨン監督(以下、監督):最初はコミュニケーションがちゃんと取れるか、気になっていましたが、それは余計な心配でした。青木さんは集中力が高く、相手役に気配りするところもある。とてもプロフェッショナルな方でした。

登場シーンでは日本刀を持って長い廊下を歩いて入ってきます。そこはかなり時間を掛けて撮りました。リキは奥深いキャラクターですから、感情のレイヤーを見たくて、青木さんに様々な要求をしてしまったのです。かなり負担が大きかったと思いますが、私の期待以上の演技で応えてくれました。

:その廊下シーンでは日本刀を振り回すアクションもありました。時代劇で日本刀を使ってアクションする場合は、十分な空間がある程度確保されていることが多いのですが、廊下はとても狭い。アクションに慣れている自分でもかなり難しいと感じたので、現場に入るまでは心配していました。

ところが青木さんは元々日本刀を扱っていたかのように、素晴らしい手さばきを見せてくれたのです。演技かアクション、どちらかが上手でも素晴らしいと思いますが、青木さんはどちらも完璧にこなしてくれたので感動しました。私とのアクションシーンで危険な部分があり、少しケガをされました。それでも氷で冷やしながら演技を続けて取り組む姿に感動しました。

素晴らしい演技をすることを韓国風に表現をすると「顔を取り替える」というのですが、まさに顔を取り替えたのではないかと思えるくらい完全に役になり切っていました。普段の青木さんの姿が何処かにあったかと思いますが、それがわからないくらい完璧なリキだったのです。映画の中にリキが登場した時点でこの作品は完成したと思うくらいでした。

──青木さんはマさんとの競演はいかがでしたか。

青木:個人的に本当にうれしかったですし、光栄でした。その喜びが顔に出てはいけないので(笑)、撮影中は役に入り込んで相手を倒すんだと思うことを強く意識しました。

ドンソクさんや監督、みなさんがワンカットずつアクションを作り上げていく過程を目のあたりにし、とても興奮しました。何ものにも代え難い素晴らしい経験をさせていただけたと思っています。

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