「難しい注文がくると燃えるんです」と染谷将太
──晴明の親友ともいえる存在、源博雅を染谷将太さんが演じています。染谷さんのキャスティングの決め手を教えてください。
夢枕さんの「陰陽師」は平安時代版ホームズとワトソンという発想から生まれているので、本作の晴明と博雅も凸凹コンビにしたいと考えて、背の高さはあえて揃わないようにしました。同じではパッと見たときにビジュアル的に見分けがつきにくいですから。
そしてボケとツッコミでいえば、晴明がツッコミ役なので、ボケをうまくやってくださる方がいい。しかもボケながら恋愛パートも担わなくてはなりませんから、これは相当なテクニックのある方でないと難しいと思い、染谷さんにお願いしました。
──染谷さんとお目にかかったときはどんな印象を持たれましたか。
染谷さんは夫の山崎貴(監督)が撮った『寄生獣』(2014)に主演されていて、撮影現場でお目にかかったことがありました。奥さまの菊地凛子さんにも会っているのです。
監督と役者という関係になり、どんな面白いリアクションを見せてくれるのか、すごく楽しみでした。
──本番のリアクションはいかがでしたか。
想像していた以上に面白くて、何度も笑ってしまいました。シリアスな場面で突然、晴明が訪ねてきて、博雅が裏返った声で「晴明」と反応するところは見事でしたね。
染谷さんは「難しい注文がくると燃えるんです」とおっしゃっていたので、燃えてもらおうと思って、「私は」という言葉を繰り返すところを「一本調子にならないように」と言ったところ、当たり前のようにさっと演じ分けて応えてくれました。さすがでした。
──博雅だけ冠に花を飾っていました。何か意図があるのでしょうか。
実際に季節ごとのお祭りのときにつけていたようです。今でも葵祭では冠に葉をつけています。博雅は晴明から「ちゃらちゃらしている」と言われますが、芸術を愛するキャラクターだからこその特徴づけとして冠に花を飾りました。
──晴明と博雅のバディ感はどのように演出されましたか。
最初から仲がいい設定だとバディ感を出すために何かする必要があったかもしれませんが、映画は絆を結んでいく過程を描いています。特に演出しなくても、自然にできていきました。
──監督からご覧になった山﨑さん、染谷さんの俳優としての魅力についてお聞かせください。
2人とも飄々としているというか、淡々と役に向き合い、必死な姿を見せないのです。ハードルの高いことをお願いしても黙々と取り組んでくれました。作品では凸凹コンビを演じていますが、本質的なところは似ているのかもしれません。
あえて違いを探すとしたら、山﨑さんは先程もお話ししましたが、生活感というか泥臭さがないのです。染谷さんが泥臭いというわけではないのですが、地上に生きている感じがあるのです。親しい方からするとそんなことはないのかもしれないですけれどね(笑)。