実在した陰陽師である安倍晴明が音楽好きの貴族・源博雅と一緒に不可解な謎を解き明かしていく。夢枕獏のベストセラー小説「陰陽師」シリーズは小説だけでなく、コミック、テレビドラマ、映画、舞台、Netflixの配信アニメと様々なメディアで展開されてきた。映画『陰陽師0』は山﨑賢人を主演に迎え、陰陽師になる前の晴明が博雅といかに出会い、絆を結んでいったのかを描いた"安倍晴明の生誕1100年"を記念したアニバーサリー作品である。夢枕獏が「『陰陽師』の映画化をするならこの人に」と望んだ佐藤嗣麻子監督に物語の着想のきっかけ、キャストや演出について語ってもらった。(取材・文/ほりきみき)

映画を見て呪から逃れる方法を見つけてほしい


──予告編に出てくる火の龍と水の龍は迫力があり、呪術を使っている場所の瞬間移動の画の切り替え方は驚きました。VFXにはかなりの時間が掛かったのではありませんか。

岡野玲子さんが「陰陽師」のコミックを描いていらっしゃいますが、それとも違う世界観ですので、どこにもレファレンスがないものを1から説明しました。例えば、これまでに撮ってきた作品は「車が爆発して…」と話せば、状況に対してみんなが同じ認識を持つことができましたが、この作品の空間が切り裂かれる場面は誰も見たことがありませんからイメージを共有するのが難しい。「今回は布がテーマなので、張ってある布を小刀でしゅーっと切り裂いたみたいにしてください」と伝えたところ、いい感じで作ってもらえました。ただ「切り裂いたときに粉が落ちて…」と話したら、みなさんが頭を傾げて、唸っていましたけれどね(笑)。

龍に関しても、西洋の作品ではトカゲやヘビみたいに肉がある感じで出てきますが、東洋の龍はもっとエレメント。龍をエネルギーとして見ているので、水や火、土、木といった感じの方が日本人にはしっくりくるのではないかと思い、そういう感じで表現してみました。

博雅と徽子女王が心を通わせるシーンもVFXです。ちょっとストレートすぎるかなと思いましたが、花が開くことで徽子女王の心情を表現してみました。ご覧いただいた方の気持ちもほわ~んとなればと思っています。

画像: 映画を見て呪から逃れる方法を見つけてほしい


──徽子女王が着ていた衣装がいわゆる十二単とはちょっと違うような気がしました。

徽子女王が着ているのは細長と言われる、貴族の姫の正装です。姫は普段、十二単を着ずに、お仕えする方々が十二単を着ていました。イメージされているものは平安時代後期くらいから始まって、明治時代に確立した十二単だと思いますが、今回、女官や女房達が着ているのも十二単です。

「陰陽師」の舞台となった平安時代中期はビジュアル史料がほとんど残っていないのですが、当時は十二単の下に着る小袖のようなものがなく、十二単をただ重ねているだけでした。ただ、それでは胸が開けて見えてしまうので、作品では長袴をタンクトップのように上に上げて着てもらいました。

純国産種の蚕「小石丸」で作った絹が平等院に飾ってありますが、それは薄くて、展示してある球体そって下に落ちてしています。「小石丸」の蚕は小さくて、絹糸はものすごく細く、それで作られた衣装はとても柔らかいのです。それが後期になると糊を効かせるようになって、鎌倉時代になるとバーンとした固いものになってきます。

ちなみに、ビジュアル史料として、「源氏物語絵巻」がありますが、「源氏物語」は『陰陽師0』の35~50年後くらいの設定で、「源氏物語絵巻」は「源氏物語」が書かれてから150年くらい後に描かれました。ですから装束は「源氏物語絵巻」が描かれた当時のものであって、「源氏物語」が書かれた頃のものではないのです。そういう意味で平安時代中期はビジュアル史料がなく、こういう感じであろうと想像して作ってもらいました。


──本作を通じて伝えたかった思いについてお聞かせください。

エンターテインメント作品として、まずは何も考えないで楽しんでいただければと思います。もしも、SNSや人間関係などの呪に囚われてしまって苦しいと思っているのであれば、どうやったら呪から逃れることができるのかを描いていますから、エンターテインメントとして楽しみながら、呪から逃れる方法を見つけていただければと思います。

<PROFILE>
脚本・監督:佐藤嗣麻子
1964年生まれ。岩手県出身。ロンドン・インターナショナル・フィルム・スクールにて映画制作を学ぶ。監督作品に、『ヴァージニア』(93)、『エコエコアザラク WIZARD OF DARKNESS』(95)、『K-20 怪人二十面相・伝』(08)、『アンフェア the answer』(11)、『アンフェア the end』(15)など。「恋におちたら〜僕の成功の秘密〜」(05)、「アンフェア」(06)、『SPACE BATTLESHIP ヤマト』(10)、「独身貴族」(13)、「ハイエナ」(23)などの脚本も執筆。

『陰陽師0』2024年4月19日(金)公開

画像: 映画『陰陽師0』本予告 2024年4月19日(金)公開 youtu.be

映画『陰陽師0』本予告 2024年4月19日(金)公開

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<STORY>
呪いや祟りから都を守る陰陽師の学校であり省庁――《陰陽寮》が政治の中心だった平安時代。呪術の天才と呼ばれる若き安倍晴明は陰陽師を目指す学生とは真逆で、陰陽師になる意欲や興味が全くない人嫌いの変わり者。
ある日晴明は、貴族の源博雅から皇族の徽子女王を襲う怪奇現象の解決を頼まれる。衝突しながらも共に真相を追うが、ある学生の変死をきっかけに、平安京をも巻き込む凶悪な陰謀と呪いが動き出す――。

<STAFF&CAST>
出演者:山﨑賢人、染谷将太、奈緒、安藤政信、村上虹郎、板垣李光人、國村隼/北村一輝、小林薫
原作:夢枕獏「陰陽師」シリーズ(文藝春秋)
脚本・監督:佐藤嗣麻子(『K-20 怪人二十面相・伝』『アンフェア』シリーズ)
音楽:佐藤直紀
呪術監修:加門七海
配給:ワーナー・ブラザース映画 
©2024映画「陰陽師0」製作委員会 
公式サイト:https://wwws.warnerbros.co.jp/onmyoji0/

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