特殊な試みのため「話の通じやすい人がキャスティングの大前提」になった
――『偶然と想像』や『ハッピーアワー』のときと同じく、プロの役者が非常に少ないことについては、敢えての選択?
濱口 敢えてと言えば、敢えてかもしれないですね。というのは、ライブパフォーマンス用の映像が最初の出口だったから。とすると、音声は使われないことを役者に説明しなきゃいけないですよね、たくさんの役者さんに芝居の声が使われないことを説明するのは、心の負担がありまして(笑)、結果として僕と話の通じやすい人がキャスティングされました。たとえば、1回仕事をしてるとか、元から知っているとか。
――さすがにここに西島秀俊さんを呼ぶことはできない?(笑)
濱口 それはやっぱりねえ……(笑)。まあ、
キャラクターに合っているか、ということもとても重要でしたし、ここに出ているメンバーであれば自分のやっていることを多くを言わずとも理解をしてくれるだろう、ということがキャスティングやスタッフィングにおけるとても大きい要因だと思います。
――役者専業ではない方に対しての演技指導に関しても、今まで通り?
濱口 セリフのあるところを何度も脚本を声に出して読んでいただく、という今まで通りですね。違う要素としては、薪割りとかの動作に関する芝居。これについては、自分が指導できることは何もないので石橋さんのご友人にご指導をお願いしました。ああいう暮らしをしている方が何人もいらっしゃるので、チェーンソーをお借りして、薪割りの仕方も教わって。
――なんと。住民の方に教わってたとは。
濱口 そうなんです。あちらのストーブは薪ストーブなので、薪割りは日常ですね。実際のところ、薪は自分で作るのではなく、ホームセンターなどで買うらしいんですけど、自分で割っちゃう人もいらっしゃるんですよ。ただ、それを電動薪割り機でやるのが、今のトレンドだそうで、ああいうふうに手でやる人は最近は少ないそうです。
――薪割りのトレンド。初耳。
濱口 電動なら力がいらないので、誰でも簡単に薪割りできますからね。
後編につづく
映画『悪は存在しない』
4月26日(金)より
Bunkamuraル・シネマ 渋谷宮下、シモキタ - エキマエ - シネマ「K2」ほか全国順次公開
出演:大美賀均、西川玲、小坂竜士、渋谷采郁、菊池葉月、三浦博之、鳥井雄人、山村崇子、長尾卓磨、宮田佳典/田村泰二郎
監督・脚本:濱口竜介 音楽:石橋英子
製作:NEOPA / fictive プロデューサー:高田聡 撮影:北川喜雄 録音・整音:松野泉 美術:布部雅人 助監督:遠藤薫 制作:石井智久 編集:濱口竜介 山崎梓
カラリスト:小林亮太 企画:石橋英子 濱口竜介 エグゼクティブプロデューサー:原田将 徳山勝巳 配給:Incline 配給協力:コピアポア・フィルム 宣伝:uhuru films
2023年/106分/日本/カラー/1.66:1/5.1ch ©2023 NEOPA / Fictive