『ゼロ・グラビティ』と『ROMA/ローマ』でアカデミー賞監督賞を2度受賞したアルフォンソ・キュアロン。その6年ぶりとなる新作「ディスクレーマー 夏の沈黙」 は、彼にとっても初となる7話のドラマシリーズだ。一流ジャーナリストのキャサリンの隠された過去が明らかになるスリリングな展開が、キュアロンらしい重厚な映像美と、主演ケイト・ブランシェットらのハイレベルな名演によって、最終話までどんな方向に導かれるかわからない作品が完成された。来日したキュアロンに本作がどんなチャレンジになったのかを聞いた。(取材・文/斉藤博昭)

「製作中はその世界にどっぷりと浸ってしまう」

ーー「ディスクレーマー」での新たなチャレンジを教えてください。

「ドラマの形式は初めてだったので、あくまでも映画と同じ作り方を心がけ、それをApple側も了承してくれました。チャレンジとしては、複数の人物ナレーションを使ったこと。観る人がどう受け止めるか試したかったのです。ひとつの作品で2人の撮影監督を起用し、シーンで分担したのも初めての体験になりました」

ーー『ROMA』から「ディスクレーマー」まで6年のインターバルがありました。『ROMA』とその前の『ゼロ・グラビティ』の間も5年です。これは意識的なのですか? それとも作りたくてもなかなか実現しない事情があるのですか?

「単に怠け者なんです(笑)。私は1本の作品に時間をかける傾向があり、製作中はその世界にどっぷりと浸ってしまう。脚本を書き、撮影し、編集まで続くと、かなり長いプロセスになります。一方で人生も楽しみたくて日常の時間もたっぷり取るため、このようなインターバルになるのでしょう。日常を送りながら何かにインスピレーションを受け、次の作品を手がけたくなる……というサイクルです。ただ、たしかに理想を言えば、もっと頻繁に作品を発表したい。私も年齢を考えると、今のままでは作品数が限られてしまいます。今後はペースアップするかもしれません」

画像: 本作を撮影中のアルフォンソ・キュアロン監督

本作を撮影中のアルフォンソ・キュアロン監督

ーーこれまでのフィルモグラフィーを振り返ると、さまざまなジャンルを手がけています。

「監督になる前から映画は大好きでしたから、あらゆるジャンルに興味を持ちました。アートハウス系、静かな人間ドラマ、アクション映画、アニメーションまで幅広いです。だから手がける作品も多様になっていくのでしょう」

ーーではここ数年、あるいは最近観た作品で心に残ったものを教えてください。

「このところ『ディスクレーマー』のプロモーションが忙しく、あまりいっぱい映画が観られないのが不満です(笑)。数年前ですが、レオス・カラックス監督の『ホーリー・モーターズ』を大好きになり、今も忘れられません。最近は、『ANORA アノーラ』とアニメの『メモワール・オブ・ア・スネイル(原題)』が大切な作品になりました。限られた時間でこうした傑作に出会えたのは幸運です」

ーー先ほどギレルモ・デル・トロの話が出ましたが、そのギレルモとアレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥとあなたの友情は、今も変わらず続いていますよね?

「もちろん! つい先日も『フランケンシュタイン』を撮影中のギレルモと、トム・クルーズとの映画を準備しているアレハンドロがロンドンにいるということで、私もプロモーション先から合流して、3人で一緒にディナーを楽しんだばかり。最近は仕事のスケジュールと地理的な問題で3人で会うチャンスは少ないですが、つねに電話などで連絡を取り合っています。素晴らしい友情は続いていますよ!」

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画像提供 Apple TV+

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